カイロで共に暮らした友への手紙

緊急特集 都知事の「ウラの顔」

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百合子さん、あなたが落第して大学を去ったことを私は知っている──

 ▶父の伝手でカイロ大へ2年生で編入
 ▶進級試験に暗い顔で「落ちちゃった」
 ▶取材に答えた「日本航空駐在員」の肩書
 ▶落第後、2人でカイロ近郊に小旅行へ
 ▶自著で留年記載も証書は4年で卒業
 ▶小池氏の「消えてほしい人間」である恐怖
 ▶「乗るはずの飛行機が墜落」も嘘

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 百合子さん。もうずっとお会いしていませんが、あなたの姿はテレビ画面を通していつも見ています。

 初めて会ったのは、エジプト・カイロ市内のペンションでした。あなたは19歳で、私は30歳。もう半世紀以上も前、1972年の春のことでした。

 あなたは私が滞在していたペンションに、商社マンのAさんに連れられてやってきました。同居相手として、Aさんが私に紹介してくれたのです。半年ほど前にカイロへ来て、カイロ・アメリカン大学に通っている小池さんだと紹介されました。

北原百代氏 ©文藝春秋

 私は同居を快諾し、あなたと2人でアパートを探しました。そしてザマレックのアパートで同居生活を始めた。あなたは冗談好きで明るく、料理上手な楽しい人でした。2人で映画『ジョーズ』を観に行った時、隣で怖がって声を上げていた姿を思い出します。ある日、お風呂を沸かす火が弱くて困っていると、百合子さんが「こうすればいいのよ」とガスボンベをひっくり返してくれた。「底にガスが溜まっているんだから」と言って。大胆で少しお茶目。それもあなたの魅力でした。

 カイロの日々を今でも懐かしく思い出します。だからこそ、私は深く悩み続けたのです。「黙っていたほうがいいのか、それとも世間に明らかにするべきなのか」と。

 でも、今のあなたの立場では、これはやはり許されないことだと思ったのです。そして事実を知りながら、黙っている私もまた、許されないはずだ、と。

 あなたは日本の法律に違反することをして、今の地位を築きました。また権力者で居続けることによって、秘密を守り続けています。

 私は事実を知る者としての義務を果たしたいと思ったのです。あなたに恨みがあるわけじゃない。今の地位から引きずり下ろしたくて、語るわけじゃない。このまま黙って死んだのでは、私には悔いが残る。そう思い、この手紙をしたためました。

2年生でカイロ大に編入

 最初に同居した時、19歳のあなたは、ほとんどアラビア語を話せなかった。でも口癖のように「お父さんが、来年からカイロ大学の2年生に編入できるように取り計らってくれているの」と言って、特に勉強をしている様子はありませんでした。お父さんは日本で石油関係のお仕事もされていたので、その伝手があると言っていましたね。

カイロで行なわれたイベントで(北原氏提供)

 秋に私が外国人向けの語学学校に行くと言うと、あなたも2回ぐらい付いてきましたね。でも、すぐ辞めてしまった。そして、その語学学校で出会った日本人留学生Bさんと「結婚する」と言い出した。出会って2カ月も経っていなかったので驚きました。Bさんはアラビア語のかなりできる人でしたから、来年のカイロ大学入学にあたり、頼れる人が欲しいのだろうと察しました。

 手許に残っている、当時、私が日本の母に書き送った1972年11月29日の手紙には、「百合子さんは来年1973年10月からカイロ大学の2年生に編入できることになったので、アパートでお赤飯を食べてお祝いした」とあります。お父さんの尽力が実ったのでした。

 1973年2月、あなたはBさんのアパートに移っていきました。新居に行くと、机の上に大学の教科書が積まれていました。彼に手伝って貰いながら、10月からの学生生活に備えているのだと思いました。

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source : 文藝春秋 2024年5月号

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