「SNSの哲学 リアルとオンラインのあいだ」戸谷洋志さんインタビュー

著者は語る

エンタメ 読書
戸谷洋志さん

 インスタグラム、Twitter、YouTube、TikTokなどのSNSは、それぞれ全世界に数億から数十億人ものユーザーをもつ。政府や企業もコミュニケーション手段としてSNSに依存する現在では、その影響力は超国家的なものとなり、もはやSNSが存在しない社会を想像できないほどだ。

 本書は、日常に深く浸透するSNSに、1988年生まれの著者が哲学的に迫る1冊である。

戸谷洋志『SNSの哲学』(創元社) 1540円(税込)

 近年では、個人情報の不正利用や若年層によるSNSへの依存が問題視されることも多く、周囲の反応を気にする“承認欲求”という言葉も一般的なものになった。多くの「いいね」を集める他人と比較し、自分が認められていないと考えてしまう人も少なくない。

「ただし、承認欲求を高めるSNSは不健全だからやめるべきだというのは短絡的にすぎます。『他人の評価に振り回されずに自律しろ』といった主張がよくなされますが、むしろ“自分らしさ”は他人からの評価があって初めて成立する。本書ではヘーゲルの議論を敷衍しながら、SNSにおける健全な相互承認のあり方を考えました」

 本書はSNSにある可能性を掬い取る一方、その限界も指摘する。その1つが#MeToo運動で有名になったハッシュタグデモだ。ワンフレーズの合言葉でネット上で連帯を試みる運動である。

「ブラック・ライブズ・マター運動など、社会に大きな影響を与えた例もありますが、多くの場合は支えとなる組織が存在せず、運動が長続きしません。

 またこうしたSNSにおける運動には一方的に他人を糾弾する傾向が少なくない。哲学者のハンナ・アーレントは、寛容さを持って他者と向き合い、目的を掲げて運動をする重要性を説きました。まさに、今のSNSに足りないものです」

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年7月号

genre : エンタメ 読書