20代に果たせなかった夢をいま、叶える!
※松重豊さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい
2023年に還暦を迎えました。この時、自分の仕事を振り返ってみて、「一区切りついた」というよりむしろ、「これまでやってこなかったことに、20代の時のような機動力で挑戦したい」と思うようになったんです。子育てはとうに終わっていて、孫もいるおじいちゃんですから、あとは妻と細々と暮らしていくことができればそれでいい。20代の頃に果たせなかった夢を叶えるための大博打を打つなら今だ、と。
テレビドラマ、映画、舞台とマルチに活躍する俳優・松重豊は、大学時代に演劇の道を志し、1986年に蜷川幸雄率いる「蜷川スタジオ」に入団。以来、バイプレーヤーとして数々の作品に出演してきた。2012年には深夜ドラマ『孤独のグルメ』で初主演。松重演じる輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が、営業先でひとり食事を楽しむ様子が人気を博し、ドラマシリーズはシーズン10を迎えた。
さらに2025年1月10日公開の『劇映画 孤独のグルメ』では、自らメガホンを取り、監督・主演・脚本の三役をこなした。「高校生の頃は、俳優ではなく映画監督になりたかった」という松重が、若かりし頃に封印した「夢」と、新たな挑戦について語る。
当初は「おっさんが一人で淡々と飯を食っているドラマのどこが面白いんだ?」と思っていた『孤独のグルメ』ですが、ありがたいことに2年前にシーズン10を迎えることができました。ですが、放送当初から企画に関わっていたプロデューサーやスタッフは、多くが異動や転職で現場を離れ、中には動画配信サービスなどの会社に移る人も少なくありません。この番組で若いスタッフが育ってほしいという想いもありましたが、それができないテレビドラマの現状にぶつかっていたんです。
そんな中、シーズン10という節目を迎え、続けるのか止めるのか、いずれにしても一度、仕切り直しをする必要があった。そして関係者で話し合って出た答えが、映画化でした。しかし「おっさんが一人で淡々と飯を食っている」だけの作品ですから、これを映画にするのは相当な力量が必要です。
そこで、映画『TOKYO!〈シェイキング東京〉』でご一緒した、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノさんに監督をお願いしました。『孤独のグルメ』は日本だけでなく東アジア一帯で見られていて、特に韓国では人気が高い。韓国ロケも何度かしていたので手応えはありました。ところが、ポン・ジュノ監督からの手紙には「いまは忙しいからできない」。続けて「でも、完成を楽しみにしているよ」と、お返事をいただきました。
その日の夜、喫茶店で所属事務所の社長と話していた僕は、何の気なしに「じゃあ俺、監督やろうかな」と呟いていました。お願いしたい監督は他にもたくさんいましたが、今のドラマの制作チームと一緒に作り上げていくには、10年以上共に歩んできた僕が真ん中にいる方がいいと思ったんです。
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source : 文藝春秋 2025年2月号