「僕は小菅さんにはデビュー以来、ずっとお世話になっているんです。でも、小菅さんがもうこんな年になってるとは思いませんでした」
1985年3月24日、私の結婚式に駆け付けた郷ひろみは、そんな挨拶で会場を湧かせました。当時私は40近かったので茶化したわけですが、彼はこう続けました。
「もしこの結婚式があと3ヵ月遅かったら、こんな華やかな場で皆さんの前で僕がこうして挨拶することはなかったと思います」
出席者の多くは「3ヵ月後は忙しいのかな」と気にも止めなかったかもしれませんが、私も含めて業界の人間にはその意味するところがわかりました。実はその日からちょうど3ヵ月後の6月24日といえば松田聖子と神田正輝の結婚式の日だったのです。頭のいい男なので、あえてそういう言い方をしたのでしょうが、裏を返せばそれだけまだ聖子のことが心に残っていたんでしょう。
私が最初にひろみと出会ったのは、集英社のアイドル雑誌「セブンティーン」で編集者として“ジャニーズ番”をしていたときで、事務所内でジャニー(喜多川)さんから「この子をよろしくお願いします」とまだ15歳で学生服を着ていたひろみを紹介されたのを覚えています。
ジャニーズに入る前、彼は東宝の映画のオーディションを受けて落ちるんですが、そのオーディション会場で彼の写真をたまたま目にして「この子、誰?」と反応したのがジャニーさん。後でひろみに聞いたところでは、お母さんと2人で日比谷から電車で帰ろうとしたら、小柄なおじさんがバーッと走って追いかけてきて、「君、これなんて読むんだ?」。ひろみの本名の名字「原武」が読めなかった。その“変なおじさん”が「お母さん、実は自分はこういう者で……」と熱心に口説くわけです。ひろみが「お母さんがオーケーしなかったら、(ジャニーズに)入らなかった」と言うほど、この母と息子の繋がりは強い。「僕の一番のファンは母だ」とも言ってました。
そんな経緯もあって、ジャニーさんはひろみのことは本当に可愛がってました。歴代のメンバーの中でも一、二を争うんじゃないかな。
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source : 文藝春秋 2023年7月号