『こんとんの居場所』山野辺太郎/国書刊行会
『風配図 WIND ROSE』皆川博子/河出書房新社
『中国の死神』大谷亨/青弓社
『こんとんの居場所』の表題作は“裸”が必要と書いてある怪しい求人広告に応募した男性が主人公。仕事先である渾沌島に行くために彼は船に乗り込み、そこで様々な人物たちと出会うが……。それぞれの人たちが、生きてきた記憶が、ある出来事によって混ざり合う過程が、とても恐く面白い。同時収録の「白い霧」も人間が白い霧になって消える怪現象を軸に物語が展開され、ヘンテコだけど奇妙な魅力にあふれた作品だ。すべてフィクションの内容だと思うが、現代社会で人々の抱える、ぼんやりした不安がフィクションの形を借りて反映されている2作品のようにも感じる。なんとか個を確立させるためにみんな努力したり工夫したりして突出しようとしてる毎日だけど、ある瞬間にふと(個なんてどうでもいいじゃないか。みんなで混ざり合いたい)と、一種の投げやりと解放感によって自分自身の存在がどうでも良くなってしまう心理を捉えていると思う。それが幸せかどうか、私たちにはまだ分からない。
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source : 文藝春秋 2024年1月号