奇しくも同時期の勇退がチラつきはじめた自公トップ。だがその道は……
9月11日午後1時半頃、首相官邸1階の記者会見室。官房長官・菅義偉による新内閣の閣僚名簿発表に永田町の一部がざわついた。その理由は閣僚と同時に読み上げられた政策企画総括担当の首相補佐官に、首相政務秘書官・今井尚哉が兼務となったことだ。
第1次安倍内閣で事務秘書官だった今井は、第2次安倍内閣発足と同時に経産省を辞し政務秘書官に就任。以来、首相・安倍晋三の右腕として辣腕を振るい、「影の総理」と呼ばれるほどのキーマンとなった。今更、あえて補佐官に起用する必然性はない。
「給与と勲章。首相の優しさだ」。官邸筋はこう解説する。秘書官の給与はこれまでの経歴を加味して支給される。今井は資源エネルギー庁次長で退官したが、補佐官に就任すれば各省次官や内閣情報官、官房副長官補らと同額へとアップするほか、将来授与される勲章のランクにも影響する。官僚としての出世を諦め、安倍と命運を共にしてきた今井への厚情というわけだ。
永田町の一部の老練な住人は、この人事に安倍の別な思いも嗅ぎ取っていた。安倍の自民党総裁任期は2021年9月末。総裁四選を目指すなら、今井への配慮はその後でもいい。任期満了まで務めるとしても、1年に1回とされている内閣改造はもう一度チャンスがある。来年の東京五輪・パラ五輪は9月6日に終わり、直後の改造は時期的に理に適う。だが安倍と親しい閣僚経験者は「仮にオリ・パラ後に改造したとしても、ほどなく勇退を決意しているのだろう。でないと今井を今回処遇した意味がない」と読み解く。
ちなみに安倍は、今井同様、第1次安倍内閣で事務秘書官として仕えた北村滋内閣情報官を国家安全保障局長、林肇前駐ベルギー大使を内閣官房副長官補と要職に起用。もう1人の秘書官だった田中一穂は財務次官を経て日本政策金融公庫総裁に収まっている。
今井らの処遇に加え、新内閣の側近の多さからも安倍の勇退路線が見てとれる。19人の閣僚のうち初入閣は13人にも及ぶ。改造前から今井も周囲に「今回はどんな奴であれ、各派閥の推す連中を入れ、ポストを回す。失言したらどんどん替える」と漏らしていた。各派閥が推薦する待機組を起用して政権の求心力を保つ狙いからだ。
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source : 文藝春秋 2019年11月号