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木村教授の第1回講義――超攻撃的な「野心」を見失わず、いかに具体的な「研究計画」を築くか

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/04/19

では、良い「研究計画」とはなにか

 さて、本題はここからです。それでは良い「研究計画」とは何でしょうか。例えば、皆さんは大学院に入る際に何らかの「研究計画」を提出されたと思います。でも、残念ながら、皆さんが現在持っている「研究計画」の大半は、我々が期待する「研究計画」には未だなっていません。例えば、この中には「日韓間の歴史認識問題」について、研究したい人がいるかも知れません。でもそれでは具体的には、それはどうやって研究していけば良いのでしょうか。「✕✕が研究したい」というだけでは、そこに示されているのは、単に皆さんの「意志」だけにしか過ぎません。少しきつい表現を使えば、それは「リサーチプラン(研究計画)」ではなく、「リサーチアンビション(研究野心)」にしか過ぎません。必要なのは具体性です。

 だからこそ、皆さんは、この授業でここから皆さんの「野心」を如何にして具体的な「計画」にしなければなりません。もちろんよき成果を上げる為には、「計画」の結果として何が得られるかもきちんと計算しておかなければなりません。何故なら、結果を計算して行われない「計画」は単に行き当たりばったりで、極めて低い確率でしか、結果へと到着する事ができないからです。自分の研究にはどんな技術が必要で、その為にはどんな授業を取り、いつまでにその能力を確保するか。資料収集の対象は何であり、どうやったらその作業は行う事が出来るのか。データはどんなものが必要であり、どうやって処理していくのか。そして何よりも、自分自身の役割を、世界に数多く存在する「仕事」の中で、どう位置づけていきたいのか。自分なりに先を見通して、具体的に「研究計画」を作り、必要であれば研究の過程でそれを柔軟に変えていく事が重要なのです。

 重要なのは、「野心」は「気持ち」であり、「気持ち」だけでは「ゲーム」にはならない、という事です。でも、それは「野心」が大事ではない、という事ではありません。何故なら、「野心」つまりやり遂げたいことがなければ、我々はやがて「ゲーム」を行う気力すら失っていく事になるからです。それは野球に例えるとこういう事です。積極的な走塁により、チームの雰囲気は変わります。これまで走れなかった選手が走れるようになれば、自信もついて前向きになるでしょう。でも、それだけでは「ゲーム」には勝てません。積極的に走っても、ただ残塁の山を築いていくだけならば、人はやがて挫折する事になるからです。

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 だからこそ、重要なのはここからです。確かに積極的な走塁の結果、盗塁は劇的に増えた。それは「プロジェクトリーダー」としての監督の能力を示すのに十分です。しかし、それだけならまだ仕事は半ばでしかありません。「超攻撃的」な「野心」を見失わず、それを具体的な「ゲームプラン」へと築き上げ、勝利を積み上げていかなければなりません。そしてそうでなければ、選手たちはやがて走塁への意欲を失い、チームは元の姿に戻っていく事になるからです。

今季、二番を任せられている俊足が武器の福田周平

 だからこそ、皆さんは早いうちにある程度の「結果」を出さなければなりません。「走れば勝てる」「走塁はこうすれば勝利に結びつける事ができる」。そう思うなら、勝利の為のグランドデザインを作り出すのは「監督」としての、皆さんの責任です。これは皆さんのゴールデンウィーク明けの「宿題」にしておきましょう。「宿題」の提出が遅れたら? ゴールデンウィークが終わる頃には皆さんの「シーズン」は約1/5以上が終わっています。「宿題」の提出が遅れて手遅れになれば、後で地団駄踏んでもどうにもなりません。そしてその時、手遅れになったあなたの「シーズン」、つまり人生の責任を問われることになるのは、皆さん自身です。

 本日の授業はここまでです。今日は研究計画における「具体性」の重要性についてお話ししてみました。来週はこの「研究計画」を、より多くの「ファン」の人に楽しんでもらうにはどうしたら良いか。この点について皆さんとじっくり考えてみたいと思います。

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