今年1月20日、ついにアメリカ大統領に就任してしまったドナルド・トランプ。当初、彼特有のどぎつい言動は選挙民向けのパフォーマンスかと思われていたが、当選後もその舌鋒がおとろえる様子はなく世界を困惑させている。
トランプ当選後の対中姿勢も意外なものだった。選挙期間中は貿易摩擦への批判なポピュリズム的な紋切り型の中国批判に終始していた彼だったが、大統領当選後の昨年12月2日、なんと台湾の蔡英文総統から祝いの電話を受けたことをツイッターで暴露し、その後も親台湾的な動きを繰り返し示している。
1979年の米台断交後、アメリカの大統領(当時のトランプは次期大統領)が台湾総統との直接接触をおおやけにしたのは初だ。言うまでもなく、中国は「ひとつの中国」のイデオロギーのもとで台湾を国家とは認めていないため、トランプの発言は中国の外交担当者や中国世論を激怒させた――、というより、大いに混乱させる結果となった。
ところが実はトランプという人物、少なくとも上記の電話会談までは、中国国内で決して不人気ではなかった。自身のタフさや金持ちぶりを恥ずかしげもなくアピールするキャラクターと、歯に衣着せぬ言動が、伝統的に「強人(ストロング・マン)」タイプの政治家を好みがちな中国人の気質によく合っていたことも理由かもしれない。
事実、昨年の大統領選の際には中国系アメリカ人の間で一定のトランプ支持層が形成されていた。在米華人ニュースサイトを見ると、「Chinese Americans for Trump」(CAFT)をはじめ、複数の中国系のトランプ支持団体の存在を確認できる。最大規模と思われるCAFTは、北京生まれの若者が中国系SNSのWeChatなどを通じて賛同者を集め、大統領選直前の昨年11月には団員が7000人を突破していたという。事実、昨年までは中国国内外の中国人のトランプ好きが、在米華人系ニュースサイトでしばしば報じられていた。
中国系アメリカ人の人口は2015年時点の統計で452万人(台湾人17.3万人を含む)で、教育水準や世帯所得の平均も全米平均より高いとされる。彼らはいかなる理由でトランプを支持したのか? また、トランプの対中国姿勢が敵対的である(ように見える)ことが明らかになった現在でも、彼らの熱気は継続しているのか? 気になるところである。