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「サラリーマン」を馬鹿にして駄目な知識を吹き込む、オンラインサロンとかいう魔境

もっともらしいことを教典にする新興宗教をやっとるだけなんですよ

2019/06/14

ちくしょう、雑用面倒くせえよ

 誰かと一緒に働き、組織として大きい仕事を手がけるのはプロフェッショナルとして夢があることですけど、実際には組織の歯車となり、会社の規律を守り、与えられた勤務時間の中で可能な仕事をできるだけやってお給料をもらう、という人生もまた尊いわけですよ。いまや転職も当たり前になり、したい仕事を選べる範囲は広がってきているとはいえ、独立して会社を始めたり、フリーランスで自分の腕だけふるって生きていくというのはなかなか大変なことです。

 組織人からフリーランスになる人の大半は、意外に面倒くさい雑務の山の前で立ち往生し、いままで人事や経理がやってくれていた仕事のありがたみを感じることになります。

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 面倒くせえんだよ、納税とか社会保険とか年末調整とか売掛金管理とか出張手配とか出入国手続きとか。やりたい仕事があれば、その10倍ぐらい雑用が発生するのがフリーランスです。ちくしょう、雑用面倒くせえよ。仕事をするのは大好きでも、また、請求書を送ることが大事だと頭では分かっていつつも、とにかく死ぬほど面倒くさくて請求書を出す気力が湧かない人は、フリーランスでは常識人の部類に入ります。なんて面倒くさいんだ、請求書だしたり領収書もらって整理する作業。

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 とってあるレシートで財布はパンパンになるし、そのレシートを月ごとにまとめ直して入力する作業すらも面倒くさい。仕事がうまくいったらいったで、経理にお願いするのも雑用押し付けてるみたいで申し訳ないし、組織になり人が増えると人間関係がややこしくなるのでさらに面倒くさい。仕事ってね、生き甲斐以前にこういう面倒くささとの闘いなんだと思うのです。

死んだ目をした疲れた起業家が増えていく

 事業を始めたら始めたで、いずれは株式上場、素晴らしい経営者として持て囃されたいという逸る気持ちをよそに実際に起きるのは、試算表作って事業単体の収支から資金繰りを計算する作業ですよ。これがまた最高に面倒くせえんだよ。

 みんな起業家精神は必要だとか、ハングリー精神だとか、好き勝手なこと言いますよね。でも起業家精神で可能になるのは、徹夜してやりたくないクソみたいな書類仕事を黙々とやる働き甲斐とかいうレベルの話とは異なる残念な作業の山です。スタートアップの会社で経営陣がみんなして疲弊しているのは、営業でも企画書づくりでも契約書の精査でもなく、出納管理であって、つまりは帳簿をつける作業です。

 そして、起業したばかりだとどうしても経理なんて雇える状況にないから全部創業者自らがやる。面倒くさい。このようにして、死んだ目をした疲れた起業家が増えていくことになるのです。