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なんと23時間以上に及んだ対局

 なお、順位戦の持ち時間は、1日制の対局で最長の6時間。対局時間が23時間15分! の劇的な記録が生まれたのは、2004年6月の順位戦B級1組(持ち時間は6時間)、行方尚史七段-中川大輔七段戦だ。午前10時に開始された対局は、翌日の午前1時35分に持将棋が成立。2時7分に開始された指し直し局は4時58分に千日手が成立。再指し直し局は5時28分に開始され、9時15分に行方七段が制す。日本将棋連盟の「名人戦棋譜速報」には、空手や登山を趣味にする中川七段がTシャツ1枚で感想戦を行う姿が掲載されている。

「囲碁だと、そもそも無勝負になることが大変珍しく、行方―中川戦のような対局はないと思います。対局開始は基本的に午前10時で、1日制の最長持ち時間は5時間ですが、国際棋戦の持ち時間にあわせて3時間が多くなりました。

 持ち時間の長い棋戦は将棋界のほうが多いですが、手数は囲碁のほうが長くなりやすく、私の感覚だと倍、将棋の平均手数が120手なら、囲碁は240手ぐらいでしょうか。これは囲碁のゲーム性もありまして、囲碁はコウとコウダテのルールがあり、盤面が進まないことも多いです。

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 囲碁は最後まで打たずに投了することが多く、夕食休憩前に終わることもよくあります。将棋だと、特定の棋士以外で夕休前に投げるのはあまりないでしょう」(山村さん)

昔は1局に7日間ということも……

 将棋も囲碁も、持ち時間がどんどん短くなってきた。将棋の名人戦だけを見ても、1968年から持ち時間は9時間、2日制で行われているが、第1~6期の名人戦は、持ち時間15時間の3日制だった。また、1937年2月に行われた故・阪田三吉贈名人・王将と故・木村義雄十四世名人の対局は、持ち時間は30時間、対局日数は7日間、その間外出禁止と厳しい条件だった。「南禅寺の決戦」として知られ、阪田が十数年の沈黙を破って、第1期名人リーグでトップを争う木村と対戦した、いわば東西決戦の大勝負だった。当時、阪田は66歳だったが、途中でちょうど6時間の長考に沈んだという。結果は木村の勝ち。

故・木村義雄十四世名人 ©文藝春秋