昨今、日本では「大麻合法化」の意見が散見されるが、世界を見渡すと合法化に舵を切るところも少なくはない。例えば、アメリカ・オレゴン州ポートランドでは2016年にマリファナが合法化され、街の様子が変わってきているという。

『クレイジージャーニー』でもお馴染みのジャーナリスト、丸山ゴンザレス氏は最新著書『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』で世界各国の麻薬・売春・スラム街などを取材した成果をまとめている。この本のなかから、マリファナが解禁された直後のポートランドを丸山氏が訪れ、日本の大麻合法化について思いをめぐらす場面を紹介したい。

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世界で巻き起こる「大麻合法化」の流れ

 政府の決定が状況を激変させることもある。それが昨今世界中で起きているマリファナの合法化である。センセーショナルに報じられることもあって、耳にしたことがあるかもしれない。ただ、日本国内での反応に実情とのズレがある。多くの人が事実を誤認しているのだ。それ自体が危険な考えというわけではないが、誤認による理解の生み出す結果はろくなものではない。そこで、私なりに現在起きている大麻合法化というのがいかなるものかを解説してみようと思う。

 まず、アメリカでの合法化の実態だが、マリファナの娯楽を含めた使用を解禁するかどうかを住民投票にかけているのだ。

 ここでポイントになるのは「娯楽」と「解禁」である。合法化の話を持ち出すと、そこかしこで大麻をくわえタバコみたいにできるようになるというイメージが先行するようだ。世紀末の無法状態デストピアでもあるまいし、いきなりそんなことにはならない。

 たとえば2016年11月のアメリカ大統領選挙と同時におこなわれた住民投票で賛成多数で可決したことで、2018年1月から解禁したカリフォルニア州の現状はどうかといえば、すでに路面店でマリファナが販売されている。もっと前から解禁されていた州のうちのひとつ、オレゴン州などはさらに興味深い状況にある。

ポートランドに大麻の広告が……「合法化」で何が変わったのか

 私が取材した2016年の段階で、オレゴン州のポートランドでは娯楽用のマリファナが解禁されていた。路面店で堂々と販売されているだけではなく、幹線道路に広告看板が設置されていた。

©丸山ゴンザレス

 これは、販売網が整備されていて、生産者から販売までの経路が確保されているということである。完全に市場として成立しており、しかもその市場が一定程度の成熟を迎えているのがわかる。ポイントは広告があること。ライバル店があれば、競争が生まれるので広告も必要になるということなのだ。

 実際にポートランドを歩くと、青い十字の看板が目印になっている店があちこちにある。入り口では身分証を提示しなければならないが、外国人であっても未成年でなければ入ることはできる。店内は高級感と清潔感、そしてオシャレ感が漂っており、怪しげな雰囲気はない。むしろ小汚い格好をしているほうが浮く。