退職後の老後資金として「約2000万円が不足する」と指摘した金融庁の報告書をめぐる混乱が止まらない。政府の報告書への対応は「受け取らない」から「(報告書は)なかった」ことになり、「質問にも答えない」ことになった。一体、どのような思惑があるのか? 閣僚の発言を追った。

閣議決定
「報告書を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい」

BuzzFeed News 6月19日

 政府は6月18日、野党議員が提出した金融庁の報告書についての質問主意書について、「回答を差し控えたい」とする答弁書を閣議決定した。

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月例経済報告等に関する関係閣僚会議に臨む安倍晋三首相(左から3人目)ら=18日、首相官邸 ©時事通信社

 立憲民主党の中谷一馬衆院議員が提出した質問主意書は、貯金がない世帯が2000万円の貯蓄を作る方策や、公的年金制度が100年安心という政府見解が維持されているのかなど、政府の見解を問うたもの。

「世間に著しい誤解や不安を与え、政府の政策スタンスとも異なることから、正式な報告書としては受け取らないと決定し、政策遂行の参考とはしないとしたところであり、報告書を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい」とする答弁書を閣議決定した。

 報告書は受け取らないし、何を聞かれても答えない。これが政府としての統一見解ということだ。

不都合な真実を隠しているのでは

 立憲民主党の福山哲郎幹事長は、政権にとって都合の悪いものを受け取らないのであれば、今後さまざまな審議会は政府が喜んで受け取るものしか報告書を書かなくなるのではないかという懸念を示した上で、政府の体質について次のように批判した。

「森友加計学園の文書改ざん、国会での虚偽答弁、防衛省の日報の廃棄や隠蔽、厚労省のデータの不備等も含めて、不都合な真実を国民に隠すという安倍政権の体質そのものが表れてきた」(BLOGOS 6月19日)

安倍晋三 首相
「金融庁は大バカ者だな。こんなことを書いて」

朝日新聞デジタル 6月18日

 これまで、政府は報告書について躍起になって火消しを続けてきた。麻生太郎副首相兼金融相は「正式な報告書としては受け取らない」と表明(FNN PRIME 6月11日)。自民党の林幹雄幹事長代理は金融庁の幹部を党本部に呼んで撤回を求めた。自民党の森山裕国対委員長は「報告書はもうない」と主張している(毎日新聞 6月12日)。

 参院決算委員会で「2000万円不足」問題の追及が強まった今月10日、安倍首相は「金融庁は大バカ者だな」と激怒していた。