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 現在、厚生労働省が示しているモデル年金(夫が厚生年金に加入し、生涯平均年収が約500万円の専業主婦世帯)は月額21万8000円とされているが、2014年に行われた年金財政検証では、最悪のケースとして14万6000円まで減額されるケースが提示された。年金制度は安倍首相が繰り返し言うとおり「100年安心」かもしれないが、支給される年金は確実に減る。

 今年の財政検証の結果に注目が集まるが、やはりある与党関係者は、公表時期は「参議院選挙のあとになるだろう」と明かしている。政府関係者の1人は「年金が選挙の争点になるのは困るのだ」とも語った(NHK政治マガジン 6月19日)。

菅義偉 官房長官
「国民の不安をあおることがないよう、丁寧に説明していきたい」

NHK NEWS WEB 6月17日

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 菅官房長官は国会内で開かれた政府与党協議会で、報告書について今後「丁寧に説明」していく考えを示した。公明党の斉藤鉄夫幹事長が麻生氏の対応について国民に説明を尽くすよう求めたが……。

麻生太郎 副首相兼金融相
「私自身は年金がいくら入ってきてという心配をしたことがあるかという点では、自分の生活としては心配したことはありません」

FNN PRIME 6月14日

麻生太郎氏 ©文藝春秋

 麻生氏は自分が年金を受け取っているかどうかを知らず、生活の心配をしたこともないという。名家の出身で、何十億円にも上る遺産を受け継いでいるのだから、そりゃそうだろう。在職老齢年金の制度に従えば、厚生年金はもらっていない可能性が高い。

還暦を迎える人の貯金額は4人に1人が100万円未満

 還暦を迎える人々の貯金額は4人に1人が100万円未満だというアンケート結果も発表されている(共同通信 6月16日)。麻生氏は世の中で何が騒ぎになっているのかわかっていないのかもしれない。本当に「丁寧に説明」できるのだろうか?

 政府は報告書を「なかった」にするのではなく、議論のきっかけにすべきだ。そのためには選挙の争点にもしなければならないだろう。老後のために「自助」が必要だと突きつけられた若者世代、現役世代は貯蓄を意識し、消費はさらに冷え込む。それでも今秋、消費税は予定どおり上がるらしい。