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 アメリカはデポジット上昇の理由を明らかにしていません。しかし日本人が経済的に裕福であり、その経済力を武器に移植を行う傲慢さを抑制し、アメリカの移植患者の不満を解消するためではないかと考えられています。

 つまり、

・海外で移植を行うことを移植ツーリズムといい、世界的に非難されている
・各国がそれぞれ自前で移植を行える体制をつくるべき
・外国人の臓器移植を受け入れる場合、多額のデポジットが必要

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 これが世界の移植医療の考え方になっています。

2013年時点での臓器移植数の国別比較(厚生労働省より)

なぜ日本では今でも移植できないのか

 では、なぜ日本国内で移植医療が進まないのでしょう? 簡単に言うと日本では脳死にともなう臓器移植は最初の段階で叩かれ、つまずいてしまったのです。

 1968年に札幌医科大学の和田寿郎教授が、日本で初めて心臓移植を行いました(和田移植)。日本初の心臓移植に対して賛否両論がまきおこりました。マスコミは騒ぎ、無関係の大阪の漢方医が裁判をおこして大混乱でした。移植を行った和田教授も脳死判定をきちんと行っていない可能性があり、患者から摘出した心臓が行方不明になり、もどってきた心臓の弁があわない、とずさん極まりないものでした。

 しかし、海外でも心臓移植が始まった時期は次々に死亡例が報告され、移植医は数多くの訴訟にまきこまれました。移植医療の黎明期には世界中で多くの葛藤があったのです。それでも欧米では心臓移植を続け、移植医療は確立していきました。

 日本では、残念ながら移植医療は凍結されてしまいました。和田移植は日本の学会では検証もされず、臓器移植はタブー視されました。1997年にできた臓器移植法も、あまりの厳しさに関係者の間では「臓器移植禁止法」と言われました。そのため和田移植に次ぐ脳死移植には1999年まで31年間も待たなくてはいけませんでした。

今でも移植が進まないのはなぜか

 現在、日本で行われている移植手術の成績はかなりいいのです。移植までこぎつけると世界的にも優れた結果が出ていますが、移植手術にたどり着けないのが日本の実情なのです。

臓器提供者の推移(厚生労働省より)

 日本で臓器移植が進まない理由の一つに圧倒的なドナー不足があります。日本の移植待機患者は1万4000人いると言われていますが、1年間で実際に移植ができるのは2%しかいません。脳死下の臓器提供は2018年には66件にとどまっています。先進国としては異常に少なく、アメリカの30分の1、韓国や台湾の10分の1程度しかありません。

 世界一移植を行っている国はスペインです。スペインでは臓器提供をしたいと思っている人は40.3%います。逆に言うと、世界で一番移植を行っているスペインですら4割の人しか臓器提供をしたいと思ってはいないのです。