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早慶MARCHも津田塾も。大学ブランド「格付け」に異変あり

「学部」と「学部」がしのぎを削るブランド戦略

2017/05/12
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「グローバル学部」が看板学部になる時代

 早慶上智、東京理科大、MARCHレベルになると、大学そのものより学部間においてブランド力でしのぎを削っている様子が見てとれる。

 慶應の看板学部はと問われれば、親世代は経済学部と答える。しかし、いまや法学部のほうが人気は高い。偏差値も上だ。優秀な女子が入学してレベルを上げたという説がある。逆に振るわないのが、SFC(湘南藤沢キャンパス)だ。1990年代、華々しくデビューしコンピューター、語学教育のカリキュラムが充実していたため、メディアから大学教育の最先端ともてはやされた。起業家養成で注目されたこともある。だが、今となってはそれほど話題にならなくなった。

 早稲田大では国際教養学部に勢いが見られる。すべて英語で授業が行われており、原則として留学が必須となっている。就職実績も良い。上位に日本アイ・ビー・エム10人、三菱東京UFJ銀行8人、日本航空8人、三菱商事7人など(2016年)。

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 親が学生だったころは、存在しなかった学部が意外にブランド力を持っている。たとえば、立教大経営学部である。立教大のなかではもっとも難易度が高い。経営学、会計学、商学という既存の学問へのアプローチよりも、グローバル企業で活躍できる人材養成を前面に打ち出したことで人気を集めた。

 法政大グローバル教養学部は1学年100人。法、経済、経営、社会などの学部に比べると、7分の1から8分の1以下である。徹底した少人数教育、英語による授業によって就職実績を高め、法政一むずかしい学部となった。

 関西の関関同立(関西学院大、関西大、同志社大、立命館大)も首都圏と似ている。同志社大グローバル・コミュニケーション学部とグローバル地域文化学部、関西学院大国際学部、立命館大国際関係学部など、学部レベルでブランド力の高まりが見てとれる。

 近畿大は3年連続志願者日本一を続けている。マグロの養殖、つんく♂の入学式プロデュースなどで、近大の知名度は全国的に広がっているが、関関同立の壁は厚くブランド力につながっていない。教育力を高め、それを、難易度、学生の進路にどう反映するかが課題だ。

©iStock.com

 大学のブランド力は歴史と伝統、規模、難易度、教育内容、研究水準、教員の社会へ向けた発信度、学生の活躍、就職実績、OB・OGなどによって構築される。教育、研究の成果、結果で評価されるには時間がかかる。大学が新設学部などの新しい試みで本当のブランド力を付けるためには、最短でも10年が必要とされよう。逆にいえば、10年後、20年後、ブランド力が変わってしまうおもしろさが大学には秘められている。

出典:文藝春秋オピニオン 2017年の論点100

著者:小林哲夫(教育ジャーナリスト)

早慶MARCHも津田塾も。大学ブランド「格付け」に異変あり

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