文春オンライン

フランスメディアはゴーンをどう見たか 「傷ついた虎の弁論」「社会面の事件」「マンデラ気取り」

「ゴーン反撃」と理解を見せた仏紙も

2020/01/11
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「夫は真実を暴く」キャロル夫人のインタビュー

 一方「パリジャン」の社説では、ゴーン被告が「自由に発言できるようになった今日、強い説得力を持たなければならない。フランスの支配を排除するためには何でもやる日本のマフィアという論だけでは、彼にかけられた非常に重い容疑を晴らすことは出来ない」とする。なおこの日のトップは、「夫は真実を暴く」というキャロル夫人のインタビュー記事である。

「パリジャン」(1月8日)

 9日一面で大きく告知しなかったのは、結局、ゴーン会見にこれらのことを上回るだけの内容がなかった、ということだろう。

「社会面の事件」と切り捨て

「レゼコー」(1月9日)

 一面トップにもってきた「レゼコー」も同じだ。見出しは「傷ついた虎の弁論」で、大きく扱ってはいるもののとくに社説もなく、会見の内容を淡々と報道しただけだった。同紙も8日の朝には社説を出して「すべての陰謀論の愛好者は真実を暴露するために爆弾を投げることを期待しているだろう」と書いた。爆弾は投げられなかったということだ。

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 この会見前日の社説では、ゴーン被告にとってはこれから始まるメディア法廷が重要だとしても、もはやルノー・日産・三菱にとって「重要なことは別のところにある」という。いかに有能な経営者であっても、一人の手に権力を集中してはならない。大企業の経営者はつねに透明性をもってきちんと報告し、反対者に対しても説明しなければならない。さらに、ゴーン被告が犠牲者であろうと犯罪者であろうとそれは「社会面の事件」でしかない、とはっきり切り捨てた。

 同紙は、事件の当初から精力的に取材しており、経済紙という性格から財界や経済界の事情に詳しい。もはやゴーン被告は、フランスでは用済みだと言わんばかりだ。