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フランスメディアはゴーンをどう見たか 「傷ついた虎の弁論」「社会面の事件」「マンデラ気取り」

「ゴーン反撃」と理解を見せた仏紙も

2020/01/11
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ゴーン被告がフランスで一定の支持を得る理由

 ゴーン会見を見ながら、私は、日本の司法のあり方が違っていれば、と残念でならなかった。ゴーン被告の演説の半分は司法への恨み節であった。そのためにずいぶん論理のすり替えが行われてもいた。ゴーン被告がフランスで一定の支持を得ているのは、ひとえに、日本の司法に対する不信ゆえである。

 ゴーン被告の容疑に対する反論も、フランスならばこの程度のことはすでにマスコミに流れていたことだろう。弁護士が同席し、捜査資料がすべて公開されるとなれば、検察側はこれ以上の努力をしなければならず、真に問題の中核に迫れることだろう。マスコミももっと深いところを掘り下げるだろう。

©︎AFP/AFLO

 そもそも、現代の経済犯罪に対しては、身体拘束して自白を求める司法は合わないと私は考える。何しろ、世界中の英知、腕利きビジネス弁護士などが、法律の穴をさがし、いろいろな国や地域の制度を使い「合法的」にみえるようにしているのだ。犯人も悪事を働いている意識はない。創造的なテクニックを使っただけだと思っている。その穴を突かなければならない。とりあえず一つの罪だけで捕まえてその後で本丸を攻めようとすると何年も拘置しなければならない。かといって証拠固めまでしてから逮捕では、時機を逸してしまう。だからこそ、GPSをつけるなどの方法がとられているのである。

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 なにも人権だ何だというような大げさなことではない。要するに、自分もいつ冤罪で捕まるかもしれない、そのときにきっちりと間違いをただし、社会的にも名誉を保ち続けられるようにするにはどうしたらいいか、ということだ。これは世界共通のテーマだと思う。

 それから今回、ゴーン被告が日本の司法の欠陥告発の旗手のようになってしまったために、日本での議論が歪められ、改善がまた遠のいたのではないかと心配である。

フランスメディアはゴーンをどう見たか 「傷ついた虎の弁論」「社会面の事件」「マンデラ気取り」

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