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「特権を手放すつもりはない」ヘンリー王子とメーガン妃の“王室離脱” 女王への「とんでもない裏切り」とは

2020/01/12

genre : ニュース, 国際

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現在は禁じられている資金調達を一方的に宣言

 エリザベス女王は君主に属するクラウン・エステートの土地や権利から生まれた利益を政府に納め、その15~25%に相当するソブリングラント(王室の活動費)を受け取っている。ちなみに新年度のソブリングラントは8590万ポンド(約122億8370万円)になると発表されている。

 2人もソブリングラントからその一部を受け取っているが、支出した公費の5%しかカバーしていないため、これを返上。その代わり現在は禁じられている資金調達を自分たちで行うと一方的に宣言したところが最大のポイントだ。

 残り95%の公費にはチャールズ皇太子のコーンウォール公爵領から得られた利益の一部が充てられている。ヘンリー王子の一家は300万ポンド(約4億2900万円)をかけて改装したロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージで暮らし、最大6人、推定年60万ポンド(約8600万円)の予算で警察官の警護がつく。

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 2人はソブリングラント以外のこうした特権を手放すつもりはないことを明言している。

 エリザベス女王に楯突くようなことをお人好しのヘンリー王子が思いつくはずがない。“首謀者”とみられるメーガン妃の身勝手な理屈では、ソブリングラントを受け取る王室のシニアメンバーの地位を返上しさえすれば、財政的に王室から独立して自己資金を調達し、自分の思うように慈善活動や社会活動を展開できるということになる。

2018年7月、エリザベス女王、メーガン妃とヘンリー王子、ウィリアム王子とキャサリン妃 ©AP/AFLO

 また英大衆紙を中心に7紙が王族の公務を独占的に取材できる取り決め(ロイヤル・ロタ)を見直すと表明。王室担当記者が王族の公務と私生活を知る上で信頼できる情報源とみなされているのは「誤解だ」と切り捨て、頻繁な誤報を増幅していると批判している。王室担当記者が正確な記事を書いてもデスクがしばしば改ざんしていると決めつけている。

 信頼できるメディアとして米雑誌タイム、ナショナルジオグラフィック、英紙デーリー・テレグラフ、メーガン妃が客員編集長を務めたことがあるファッション雑誌のイギリス版ヴォーグなどを挙げ、メディアを選別する権限は自分たちにあるという独善的なメディアポリシーまでぶち上げた。これで怒らないメディアがいればおかしい。

 英王室と英メディアは伝統的に持ちつ持たれつの関係で、パパラッチと呼ばれるフォトグラファーに追いかけ回され、悲劇の交通事故死を遂げたダイアナ元皇太子妃でさえメディアを都合良く利用していた。メディアにも報道を通じてこそ王室のありのままの姿をイギリスや英連邦の国民に伝え、王族のおごりをたしなめてきたという歴史と自負がある。

ダイアナ元皇太子妃 ©文藝春秋

 メーガン妃はソブリングラント5%、コーンウォール公爵領の利益から95%という公費の内訳を公表した。しかしメーガン妃に敵対的な報道を続けてきた英大衆紙デーリー・メールによると、ソブリングラントは推定200万ポンド(約2億8600万円)、コーンウォール公爵領の利益からは推定196万ポンド(約2億8000万円)で、辻褄が合わない。