昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/01/29

なぜ日本では議論すらできないのか

 これだけ世界の見解が変わっているにも関わらず、日本では、ポツダム条約以来、ほとんど変更の加えられていない法律が、いまだに厳しく施行されている。現行の法律で禁止されているのだから、当然といえば当然なのだろうけれど、法改正の議論はほとんど起きていない。「法律で禁じられている危険なドラッグ」というこれまで国が言ってきたことがすっかり浸透しているということもあるが、法律で禁じられているだけに、議論をすることすらはばかられるという空気感もある。

 こうした空気感を加速させるのはメディア、特にテレビの扱いである。大麻関連の罪で逮捕されると、「快楽のために法律を犯した人」として厳しい社会的制裁を受ける。「大麻なんて使ってけしからん」という声が支配的な中、「でも海外では医療目的で使われていますよ」という声はなかなか聞こえない。

©iStock

マリファナの規制緩和に対する3つの反対意見

 私が本を書こうと思ったのも、まさにその認識のギャップが看過できなくなったからに他ならないのだが、本を書いてみると、まれにとはいえ、お叱りや批判を受ける。医療使用も含むマリファナの規制緩和について、あくまでも反対という意見の理由は、だいたい3つに集約される。そして、それぞれについて、以下に記すように反論している。

1.法律でダメだと決まっているから

 これに対しては、この法律がカンナビスのメカニズムが解明されるずっと前の1948年に施行されたものだという理由で、すでに70年がすぎた今、この法律にしがみつくことが、国民のメリットになるとは考えにくい。国際的コンセンサスを鑑みて再考を促したい。

2.危険ドラッグへのゲートウェイ(導入)になるから

 この理論は、欧米でもカンナビス解禁反対派によって、たびたび論じられてきたものであるが、実際にカンナビスの使用という入り口がハードドラッグの使用につながる、ということを証明したデータはいまだに存在しない。それどころか、危険ドラッグ依存者の社会復帰を助けるための「ハームリダクション」の一助として、カンナビスが取り入れられる手法が定着しつつある。

3.カンナビスが医療でできることは、西洋医学でできる

 それは確かにそうかもしれない。しかし、化学的に人体に作用する劇的なアプローチによって、なんらかの副作用を引き起こす西洋医学の医薬品と、自然界に存在する植物と、どちらが「良い」かについては議論の余地があるはずだと考える。個人的には、選択肢があるのであれば、後者を選びたいと思っている。

4.合法化はドラッグが蔓延した国が仕方なくやっていることなので、日本に適用する必要はない

 確かに、現在、カンナビスが合法化された地域や国は、法改正以前から、かなりの人口がマリファナを薬として使用したり、嗜んだりしてきた場所である。それを「蔓延」といえるのかどうか、つい辞書を引いてしまった。「病気や悪習などが広がりはびこること」と書いてある。ところが、合法化している場所では、まずもって「マリファナ使用=悪習」という構図すらもはや打ち壊されているのだ。難病や恒常的疾患、また終末医療や緩和ケアに役立ち、コモデティとして資金をもたらし、税収の増加につながる存在として目されている。