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イニエスタが出した「衝撃のパス」

――考えてではなく、感覚でプレーしているように見えます。

「サッカーって、パターンがあるものなんですけどそれがアンドレスにはないというか。昨年8月、俺が練習に合流した初日からすごさがわかりました。ゲーム形式の練習で、右サイドでアンドレスがボールをもらったんですが、1回も俺のいる左を見なかったんですよ。なのに、ワンタッチでバコーンて俺の前に蹴ってきて、おれはめっちゃフリーだったんですけどボールが来ると思ってなかったから、全然準備してなくて。こっちが見えていたんだ、そんなボールが出せるんだと、それは衝撃的でした。それからは見てなくても、とりあえずボールは出るものと思って走ってます。でもまだやっぱり植えつけられた感覚があるから、思ったタイミングで来なかったら止まったりしちゃうんですよ。それでアンドレスと何回か入れ違いがあって、あー残念というのがあったんです。でも、俺はアンドレスに『今のタイミングでいいからもう1回出して。もう1回走るから』って言ってます。

 あと、ルーカス(ポドルスキ)はとりあえずシュートがえぐいです。シュートはもう見たことがないレベルです」

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©AFLO

――ポドルスキはドイツ代表でも中心的なフォワードでした。

「もうシュートには本当にびっくりでした。本当に。で、1回ね、聞いたんですよ。『どうやったらそんな強いシュート打てるの』って。そうしたら、『打ちまくって練習しまくるしかないんだよ』って言われて。あれだけ決められる理由は、あれだけ打ってるからだなと思いました」

 
 

――ただそんなビッグネーム揃いの中でも酒井選手は、自分のプレーを失っていないように見えます。

「俺は日本に帰ってきたからといって日本に合わせるつもりはなくて、海外でやってた、むこうの標準のプレーを、やっぱり日本でもやらなきゃと思ってます。練習でも試合でもヨーロッパを意識して、イメージしてます。それを意識すると、練習でも必然的に周りへの要求が出てきます。自分のためにプレーして、思ったことを発言して、それをみんなが受け止めてくれた。

『相手が誰であれ、高徳があれだけがっつりボールを取りに行ってるんだから、俺もがっつり行っていいだろう』と口にした選手がいたって間接的に聞いたんですよね。あと『やっぱそうだよね、やらなきゃだよね、と思わせてくれた』と言ってくれた後輩もいました。ああ、こういうことなんだって思えたんです。自分がチームにこうやってくれと求めるんじゃなくて、自分が自分のために追求していることをチームのみんなが見て、いいと思えばやってくれるっていうのが、ちょっと今までにない感覚で。やりがいを感じました」

 

撮影/三宅史郎