なぜ官邸は、各ツイッターで否定させたのか?
つまり、官邸はテレビ番組でのコメントを各ツイッターを使い否定させたが、その論拠となる証言は「政府」「自民党」「厚労省」など身内から出ていたことになる。いかに内部も呆れているかがわかる。
この“情報流出”にイラッとなった官邸はテレビ番組に矛先を向けたのではないか。そうすれば自分たちの「いいお客さん」が支持してくれると踏んだのだろう。相殺されると計算したのだろう。しかしここでも後手後手となってしまったことになる。
特措法改正だけでなく、中国と韓国からの入国者に対する検疫強化に対しても内部の声が紙面に出ていた。
《政府内にも動揺が走った。「驚いた。もう水際対策を緩めようと考えていたから」。ある政府関係者はこう語る。》(毎日3月6日)
記事のタイトルは「また唐突 首相要請」だった。
読売新聞にも詳細な「論評」が載っていた。
「新型肺炎 水際対策 中国制限 後手に…『習氏国賓来日』控え配慮」(読売オンライン3月6日)
《後手に回っていた感が否めなかった。日本政府がこうした対応をとったのは、4月上旬に中国の習近平国家主席の国賓来日が控えていたことが大きく影響したとみられる。習氏の来日は、日中関係改善を目指す安倍外交の集大成として、重視されていた。日本政府関係者は「入国拒否の地域を拡大し、国賓来日に水を差すわけにはいかなかった」と明かす。》
読売にも対応が後手と「論評」された。
産経新聞は「防疫より中国に忖度したのか」(3月3日)と一面のコラムで早々に書いていた。これも「論評」だろう。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(ロブ・ライナー監督、2017年)は、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストといった大手新聞がブッシュ大統領の「イラクに大量破壊兵器の保持」を伝えるなか、疑問を持った中堅新聞社の報道を描いた作品だった。
そのなかで支局長が記者たちに言うセリフがある。「政府が何かしたら必ずこう問え。それは真実か?」 。政府の情報だけを報じるのはただの広報なのである。 その都度疑問を持ちチェックするのは当たり前の姿勢というセリフ。
今回の件、メディアの論評すら牽制し、政府の公式見解だけを強調する姿勢はおかしい。そして何より焦りがみえて危なっかしい。政府の苛立ちは野次馬案件でもあるが、国民にそのうち返ってくるかもしれない危険な現実であると思う。
政府が緊急事態宣言を出すというなら、メディアは異常事態宣言を出したらいかがだろうか。