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効果的で美しい凸の使い方

 鋳物で出せる線には、最適な細さというのがある。細すぎる線は鋳物では作れない。この蓋のデザインは、そのギリギリの線をよく理解している。凸の部分を多く、まんべんなく配置している。すべり防止力が高い。しかし、すべり防止のためにデザインしたように見えない。効果的で美しい凸の使い方になっている。

 原画を描くときに、蓋と鋳物の特性を良く理解してデザインしたか、原画からマンホール蓋のデザインにおとしこんだデザイナーの技量が高いのか、その両方か。とにかくデザインのクオリティが高い。画力の高い羽海野チカの作品「三月のライオン」の良さが存分に発揮されている。

渋谷区 王さまニャー蓋 1枚のみ(スタンプラリー対象)
千駄ヶ谷大通り商店街
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-16-5
渋谷区 二海堂晴信蓋 1枚のみ(スタンプラリー対象)
千駄ヶ谷大通り商店街
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷1-4-7

 若干、カラー樹脂の入れ方が甘くなっているところがある。十分な納期だったんだろうか……。

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 ここで突然、北区の新しいデザインマンホール蓋、清野とおる蓋の話をする。

 

 おそらく、清野さんはマンホールの蓋のデザインの仕事がきた時にすべり防止の説明を聞いたと思う。余白は少なく、凸部分を多くして欲しいと言われたはずだ。

 清野さんの画風は描き込むというスタイルではない。苦肉の策で、余白に「赤羽」「赤」などの文字を配置したり、やたら饒舌な蓋デザインになったんじゃないかと思う。結果、画力だけではない良さが十二分に発揮された良い蓋ができた。渋谷区の蓋とは対極的な解決方法だ。どっちも良い。この、どっちも良いという多様性が文化を豊かにしている。

マンホールカード配布場所

 東京・将棋会館 1F売店(東京都渋谷区千駄ヶ谷2-39-9)

 配布時間:10時~17時(火曜、年末年始 お休み)

品川区――観光大使の「シナモロール」

 品川区は、2018年から品川観光大使「シナモロール」のマンホール蓋を設置している。2020年3月8日時点で8種類8枚。すべてデザイン画像を貼っただけの蓋だ。鋳物メーカーや枠部分に若干の違いはあるが、ただ画像を貼っただけの蓋を紹介するのも疲れてしまうので、まとめて紹介する。

品川観光大使「シナモロール」のマンホール蓋。左上から順(時計回り)に「シナモロール大井ふ頭シナカモン蓋」、「品川紋次郎武蔵小山たけのこ蓋」、「品川紋次郎品川橋さくら蓋」、「シナモロール天王洲やたたま蓋」、「シナモロール大崎さくら蓋」、「シナモロール大井町ビーチュウ蓋」、「シナモロール大井町イルミネーション蓋」、「シナモロール大井町あおぞら蓋」

 詳細を知りたいという方は、品川区ホームページをご覧ください。

 ここまでの所要時間は……約8時間。品川区が大変でした。所要時間の半分は品川区です。交通機関の混雑をさけるため10時に開始、夕暮れまでの約8時間。蓋の平均掃除・磨く時間は1枚当たり約5分。

路上の蓋には地域の歴史が発露している

「東京都 デザインマンホール蓋設置・活用等推進事業」で作られたマンホール蓋は、それぞれの自治体がキャラクターを選定して、それぞれのやり方でデザイン蓋にしている。そのため、方向性にばらつきがある。

 観光資源として、どのようなものが効果的なのか。世田谷区のように他の観光資源と一体的に活用して相乗効果のある方法が良いのか。北区のようにアイデアで勝負するのか。渋谷区のように高いクオリティの蓋を作るのか。蓋自体を資源にするよりも、自治体オリジナルキャラクターと地域の資源をアピールする素材として蓋を作るのか。自由で良い。

撮影のため、マンホールをきれいに磨く筆者

 街のインフラは街の歴史を背景にして存在している。路上の蓋は、上下水道、ガス、通信などの街のインフラの窓口だ。路上の蓋には地域の歴史が発露している。その路上の蓋のデザインに物語があれば、面白くないわけがない。マンホール蓋に注目して、わざわざ現地まで見にいくのは、蓋そのものだけが目的ではなく、そこに歴史や物語、地元愛を見出すためだ。

 東京都23区の新しいマンホール蓋めぐりはこれで終わる。が、終わらない。

 東京都の多摩地区が、これまたすごいのだ。「東京都デザインマンホール蓋設置・活用等推進事業」で新しいデザインマンホールが設置されたのは、17区市113か所。東京都23区は7区32か所、多摩地区は10市81か所ある。多摩地区の方が多いのだ。えらいことになった。困った。まだまだあるぞ、すごいぞ東京。困った。困った。はやく全部、見に行かなきゃ。多摩編につづく。

 写真撮影=竹内正則

前編「東京都の新デザインマンホール蓋をすべて回ってみた 23区東部編」を読む

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