新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、欧米など各国では打撃を受けた個人や事業者の家賃支払い猶予に向けて対策を急いでいるという。日本では不動産所有者への協力要請にとどまっているものの、今後法整備が進む可能性もある。今、全国のオーナーたちもまた、困難な局面に立たされているといえる。
全国賃貸住宅新聞社が発行する賃貸不動産オーナー向け情報誌・月刊「家主と地主」が取材した、賃貸経営にまつわる稀有な経験・事件を紹介する(出典:「家主と地主」2019年11月号)。
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深夜に発狂する好青年
4年前、オーナーのAさんのアパートに、地方から男子大学生が越してきた。大学で柔道部に打ち込むスポーツマンの好青年だった。
半年が過ぎたころ、「深夜に学生が部屋で騒いでいます」と、住人から連絡が入った。クレームがあったことを同学生に伝えると、「大学の友人数名で飲んでいました。ごめんなさい」と告白。反省した様子だったことと、同学生の父親からおわびの菓子折りが送られてきたこともあり、これで改善すると信じた。
だが、クレームは無くなるどころか日を追うごとに増えていき、再度注意しに行くことになった。すると、「騒いでいない。知らない」と反論。そこで、父親にも連絡を入れたのだが、「息子は騒いでいない」と、電話越しに激昂し、同親子との関係は泥沼と化した。
その後、数カ月がたち遂に同学生が退去に追い込まれる出来事が起こった。
ごみの分別や指定日を守らなかったことでも住人からクレームが上がったのだ。指定されていない集荷場所に段ボールを不法投棄していたことが、貼られていた送り状から発覚し、近隣マンションの住人が警察に通報。さすがに懲りたのか、2年暮らした部屋を出ていった。
「青年に裏の顔があることは住人の間では評判で、深夜のベランダで発狂したかのように叫ぶこともあったようです」(Aさん)