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 つまり最初は身体弱者に死亡者が多かったが、感染が拡大するにつれて体力のあるものでも死亡するようになったという事で、これは現在のコロナ禍における欧米の事例とよく似ていると言えるだろう。感染者数が増大するにつれ、その犠牲者はしだいに壮健な者にも及んでくるという故事は、あらゆる感染症にとって例外ではない。

なぜ“第2波”のほうが死亡率が高いのか

 内務省の記述では、第2回の流行が最も死亡率が高いとし、第3回は残存する未感染地域の地方や郡部が主だとしている。総じて第2回の流行では、第1回で感染していないものは比較的重症になりやすく、第1回ですでに感染している者が「再感」した場合は軽症だとある。内務省は以下3波における感染者と死亡者と死亡率をあげているので引用する。

<第一回流行(1918.8-1919.7)

感染者:2116万人 死者:25万7000人 死亡率:1.22%

 第二回流行(1919.10-1920.7)

感染者:241万人 死者:12万8000人 死亡率:5.29%

 第三回流行(1920.8-1921.7)

感染者:22万人 死者:3600人 死亡率:1.65%

(内務省,104)>

 この数字を見る限り、第1回流行(速水『前流行』)での感染者が圧倒的に多いが、死亡率は1.2%強。遅れてやってきた第2回流行(速水『後流行』)では感染者数は第1回の1/10程度だが致死率は約4~5倍の5.3%弱にも及ぶ。最終的に速水によれば、日本内地の総人口約5600万人に対して約45万人が死亡。総人口に対する死亡率は0.8%となっている(朝鮮・台湾等を含めると0.96%)。

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スペイン風邪感染者隔離のため、倉庫にベッドが並べられている(1918年、アメリカで撮影) ©getty.jpg

 第1回の流行では感染せず、免疫を獲得できなかった者が、第2回の流行で直撃を受け、重症化し死に至ったことが推測される数字となっている。これを以て「新型コロナウイルスには早期に感染し、免疫抗体を獲得した方が得」との教訓を導き出すことはできないが、「パンデミックは数次にわたって起こる」こと。「パンデミックの波の後になればなるほど重症化する例が多い」というのはスペイン風邪のたどった揺るぎない事実である。つまりパンデミックは津波のようなもので、第1波が押し寄せて収まったと思ってもまたすぐに第2波、第3波が来る、という事実を示している。