新型コロナの感染拡大によって、多くの人々の生活に影響が及んでいる。医療従事者をはじめ、人々を守るために命がけで激務に勤しんでいる方がいる。感染対策が不十分な「3密」職場で不安を抱えながら働いている方もいるだろう。一方で、仕事がなくなってしまい、生活に支障が出て困っている方も多くいるはずだ。

 コロナ危機の影響は人々に平等に降りかかるわけではない。より厳しい状況に直面しやすいのは、貧しい人々や現場の労働者たちだ。私が代表を務めるNPO法人POSSEの労働相談窓口には、こうした方々からの悲痛な声が日々寄せられている。特に、職場のなかでも弱い立場に置かれやすい非正規労働者からの相談は深刻なケースが多い。

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 本来であれば、このような弱い立場の人々を守るための思い切った政策が求められるが、残念ながら、現在のところ労働者の置かれた現実に正面から向き合った有効な施策が打ち出されているとは言い難い。労働者自身が窮状を訴え、対策を求めていくことによってしか、この状況は変わらないだろう。

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 そんななか、実際に立ち上がり、声を上げはじめた人々がいる。ここでは、2つの事例を紹介し、労働者が自らの権利を行使し、生活を守る術について考えていこう。

サイゼリヤのパート従業員・Aさんは……

「会社が国の助成金を利用してくれない」と語るのは、外食チェーン大手「サイゼリヤ」の千葉県内の店舗で働くパート従業員のAさん(30代女性)だ。Aさんは、1日5時間、週に4、5日の勤務をしていたが、長男の通う幼稚園が休園したため、3月中旬から仕事を休まざるを得なくなってしまった。

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 Aさんは、保護者を支援するために国が整備した助成制度を使って有給で休みたいと店長に申し出た。しかし、店長からは、国の制度ではなく会社独自の制度で対応すると説明された。会社独自の制度とは、臨時休校にともなう休業補償として一律で日額2,000円を支給するというものであった。Aさんの普段の賃金は1日当たり約4,600円であり、国の制度を利用する場合にはこの全額を受け取ることができるため、その差は大きい。このため、Aさんは、国の助成制度を利用して賃金全額を保障してほしいと何度も訴えたが、聞き入れられることはなかった。