自分がスポットライトを浴びたい
あるいは環境大臣時代。ここに政治家としての本性が凝縮している。小池は「クールビズ」の推進役としてファッションショーを開催したほか、温暖化対策として丸の内で「打ち水」のパフォーマンスをしたり、レジ袋削減のためにと風呂敷の利用を打ち出し、自らがデザインした風呂敷を披露したりした。
そのいっぽうで、当時の環境省は水俣病患者の救済やアスベスト被害という、ひとの身命にかかわる切実な課題を抱えていたが、小池はそれらと向き合おうとはしなかった。
小池はひとが必要としていることをするのではなく、自分がスポットライトを浴びるのに必要なことをする。本書を読み進めるうちに、そんな行動原理が明瞭になっていく。それからすると、コロナ対策として自らが出演するCMを大量に投下するのは都知事選対策と言われもするが、そうすることが小池の習性に思えてくる。
いくつもある「ジジ殺し」エピソード
こうした「スポットライト中毒」と同様に、『女帝』のキーワードとして取り上げたいものがある。「ジジ殺し」だ。最初に入った石油会社では社長が宴席や接待ゴルフに連れて行くお気に入り社員であった。テレビに出るようになると「テレビ東京の天皇」とまで呼ばれた社長に気に入られ、ニュースキャスターに抜擢された。そんなエピソードが本書にはいくつもある。
なかでも新進党・自由党時代の小沢一郎に対して真骨頂を発揮する。たとえばこんな逸話だ。「山口敏夫の長男の結婚披露宴に呼ばれた小池は、むりやり小沢をステージにあげるとデュエットの相手をさせ、皆の前で『瀬戸の花嫁』を歌ってみせた。小池にリードされながら、真っ赤になって音程を外しつつ小沢は熱唱した」。
また党の選挙用ポスターの撮影現場では、ヘアメイクを押しのけて小沢の眉毛を切り、化粧ブラシを走らせて「ほーら、良くなった」というのであった。
小池と小沢ではその当時、当選回数で8回(参院選を含めても7回)、年齢で10歳も違う。いわば大先輩に対して、こんな無遠慮で厚かましい振る舞いは、常人にはとてもできないだろう。