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「彼女は必ず小沢さんの真横に座る」

 政治の世界では床の間を背にして座る者は自然と決まっていくというが、小池は小沢に取り入ったことで、たいした役職経験もないのに上座にすわることができた。

 新進党・自由党で小池と同僚であった西村眞悟は、石井の取材にこう話している。「彼女の立場は、やくざの世界でいうところの『姐さん』や。子分とは立場が違う」、「小沢さんを囲んで飯を食うとする。俺は必ず向かい合って座る。彼女は必ず小沢さんの真横に座る」。

 子分は子分で序列があるように、議員には議員で当選回数などによる序列がある。小池はそうしたものをすっ飛ばす術を知っているのだ。

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小池百合子都知事 ©︎getty

 こうした処世術は、男社会で生きるためのしたたかさでもあったろう。同時に自分を大きくみせるはったりでもあった。この「はったり」も小池を語るキーワードのひとつだ。小池がキャスターを務めた番組のスタッフは、「平気ではったりができる。虚業に疑問を抱かない。見識や知識がなくても、それを上回る器用さと度胸があった」と評している。

「平気ではったりができる」

 小池はスポットライトを追い続けるうち、首都東京のトップに、そして自らが党首となる新党を結成するまでになる。「チアリーダー」から「姐さん」、そして「女帝」へ、だ。

 2016年の東京都知事選で小池は、待機児童や介護離職などをなくす「7つのゼロ」を公約にした。そのなかには2階建て電車を走らせての「満員電車ゼロ」まである。そんなはったりを平気でいい、4年経っても実現の気配はなくとも平然としていられる。

 そして7月、小池はふたたび都知事選に立つ。選挙はスポットライトを浴びる最高の見せ場だ。おまけに堀江貴文が出るとなればなおさらである。その高揚感からいったいどんなはったりを、いや公約を打ち出すのだろうか。

 なお『女帝』で石井は、小学生時代の小池のこんなエピソードを紹介している。「小学5年生の時には校内の弁論大会で優勝、題は『ウソも方便』だったという」。

女帝 小池百合子

石井 妙子

文藝春秋

2020年5月29日 発売