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1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか

 先の中谷氏がこう話す。

「民間企業であれば、社長や役員が巨額の予算を投じて自分たちが作ったサービスを利用したことがないなんてことはありえませんし、うまくいっていない事業の検証や改善を行わないまま新規事業を進めるなどということは論外だと思います。

 1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか、自分が使ってみなければその理由がわからないのは当然です。使い勝手はどうなのか、自分自身が体験をし、どういうものになれば国民が使いたいと思うのか、ユーザーの視点に立って考えることが組織のトップにおいては大変重要なことだと思います。

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 コロナ禍を経験して日本でもハンコや通勤の文化の見直しがようやく議論され始めましたが、マイナポータルに関してはiPhoneとMacにも昨年末にやっと対応したくらいで、まったく世の中の動きについていっていない。今回の給付金騒動で見えた課題を真摯に受け止め、非常に時代遅れで効率の悪い仕組みや考え方を見直す好機と捉えなければならないでしょう」

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時代遅れのシステムからの脱却を

 現在、高市氏は一人1口座のマイナンバーとの紐付けを「できれば義務化したい」としており、来年1月に召集される通常国会に改正法案を提出する予定だ。しかし、日本では個人の資産を政府に把握されることに対する不信感は強く、「マイナンバー制度の議論が始まった際も同様の議論が出たが不可能だった」(当時を知る自民議員)ため、今回も任意の形となり骨抜きになる可能性が高い。そうなれば、いよいよマイナンバーは無用の長物ということになろう。

 スマートフォンがすでに国民の間で普及していた2016年に本格運用が始まったマイナンバー制度だが、カード保有という形式にこだわるなど、発想がパソコン時代からまったく脱却できていない。時代遅れのシステムを無理矢理利用しようとせず、もっと簡素で使いやすいシステムを新たに構築する方が安上がりで、何より国民のためになるのではないか。