1ページ目から読む
2/2ページ目
究極のポップ・アートがここに完成を見た
次なる大きな展示空間に身を移すと、こちらでも街で撮られた膨大なスナップショットが壁面を覆い尽くしている。撮影された時代はマチマチなようなのだけど、どれが古くてどれが新しい写真なのかは判然としない。
いや、観ているとだんだん撮られた時代や場所なんて、どうでもよくなってくる。この世ではいつでもどこにでも、光が降り注いできたのだ。その光によって照らし出される何がしかの事物がいつもあり、幸いにもものを見る能力を得た私たちは、それらが光によって浮かび上がる様子に立ち会うことができる。それをひたすら喜びとして受け取ればいいのだという心境に、森山大道の写真は至らせてくれる。
約60年の創作人生を通じて、不変の撮影・発表スタイルを貫き、
「眼に映るものはすべて等価だ」
「レンズを向けてシャッターを切れば、すべては等しく写真になる」
という真理に行き着いたのが森山大道である。
すべてをフラットにしてしまう森山の写真は、アンディ・ウォーホルらが20世紀に大成させたポップ・アートというジャンルを、21世紀において究極のかたちにまで推し進めた表現といえそうだ。