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それぞれの「新しい日常」のために圧倒的な検査拡充を

 だからこそ、自分自身の感染の有無だけでなく、社会全体の感染トレンドの状況を正確に把握したうえで、各個人の感染リスク(同居人への感染も含む)や職業等のライフスタイルに合った、それぞれの「最適解」となる新しい日常を過ごせるようにするための環境整備が極めて重要になるであろう。そのためには、検査・追跡・隔離キャパシティの圧倒的充実が必要だ。

 解除を決めた国は全て競うように検査体制を拡充している。筆者の勤務する大学の担当する地域は南ロンドンの貧困層であり、英国でも最もコロナの被害が大きかった地域だ。人口約200万でも、1日2万5000件のPCR検査ができるように急ピッチで対応を進めている。また、唾液検体を用いた在宅での自己検査のための実証が進められている。

渋谷健司氏

 PCR検査の目的は3つある。1つ目は、症状のある個別の患者にどのような治療が必要なのかを診断することである。2つ目には、感染拡大を防ぐために、無症状感染者を含めて予防的にスクリーニング・隔離すること、そして、3つ目は、再度の緊急事態宣言等が仮に必要な状況となった場合に、的確なタイミングでの迅速な対応を可能にするための感染トレンドの正確な把握をすること、である。これまでの日本の対策は、主に最初の目的に重きが置かれていた。しかし、感染トレンドを的確にコントロールをして、経済・社会を回すという目的には、後2者の視点が重要だ。

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 PCR検査ができるだけ多くの人々に幅広く行われるよう検査体制の拡充を進めつつ、特に感染抑制が必要な病院・介護施設の関係者やエッセンシャルワーカーについては定期的な検査を徹底することが不可欠だ。併せて無症状感染者や軽症者が代替施設で療養できるシステムも確立することにより、感染抑制のための総合的なインフラ整備を進めることが最優先となる。

©iStock.com

 感染者の隔離を進めて感染抑制をするとともに、医療機関からの定点サーベイランスを確立し、信頼性の高い感染トレンドのデータを公表しながら、万が一再度の緊急事態宣言が必要になった時も、最も効果的なタイミングで必要最小限の地域やセクターに対して機動的かつ緻密な措置をとることにより、経済への影響を最小限にとどめることを可能とする体制整備が、第2波に向けて必要となる。

 来年に延期された五輪の無事の開催を望む方も多いと思うが、五輪開催には、「世界一安心なコロナ対策を実施する国・都市」となることが最低限必要だ。再選された小池都知事と国は、東京から世界一安心なコロナ対応をしている国・都市であることを誰もが信頼できるデータにより示していくべきだ。