よりテクニカルに説明すれば、東京都からは、どのような状況の方々(例:疑いのある症状のある方、無症状の方等)が何人検査を受け、そのうち何人が陽性なのか、分母が公表されておらず、また、発症日の情報も公開されていない。感染状況を把握するための実効再生産数の推定も困難な状況であり、第2波に向けてのモニタリング体制の不備も明らかになってきている。
歓楽街に出入りする若者の感染が多いから前回と違うという説明のみでは、感染拡大は防ぐことはできない。今こそ、危機感を持って検査を徹底的にやり、タイムリーなデータの公表を進めるべきだ。オープンソースでデータ共有システムを開発し、プログラミングのコードまでも世界の人々と共有してきた東京都にできないはずがない。
自粛を繰り返さないために
皮肉なことではあるが、緊急事態宣言解除後の新型コロナの再燃は、自粛に大きな効果があったことを示している。
欧米における検証では、緊急事態宣言、ロックダウンなどによる社会的距離の徹底が感染拡大抑制につながったことが科学的に示されており、国際的コンセンサスになっている。そして、初期の迅速な対応を取ることができるかどうかで、その後の被害状況が大きく異なることも示されている。
しかし、ロックダウンや緊急事態宣言は、大きな社会経済的ダメージを引き起こす。日本をはじめ各国が経済活動をできるだけ早期に再開したいと考えることは当然であり、西村康稔新型コロナ対策担当大臣も「緊急事態宣言は誰もやりたくない」と会見で述べたが、まさに本音であろう。それでも、解除をすれば感染の再燃が起こり、感染が大きく拡大する局面となれば、緊急事態宣言やロックダウンの繰り返しをせざるを得なくなる。
しかも、今回の東京の例でも明らかなように、3密回避や新しい生活様式を守ることに一定の限界のある職種も多い。それは夜の街に限らず、医療や介護職でも同様だ。休業補償がない自粛に頼る限り、このしわ寄せは社会的弱者やエッセンシャルワーカーに来る。
新型コロナの感染リスクは個人の年齢や基礎疾患の有無に加えて、職場や生活環境などに大きく左右されることがよく知られている。誰が感染しているか分からない状況では、マスク着用や社会的距離をとることは非常に大切だが、画一的な対応だけでは社会を回すことはできない。