ああ、そうだった。いま私たちに不足しているのは、自然を含むこうした外界との交わりだったな……。

 コロナ禍で仕方のない面が多いとはいえ、富士山を近くに望む地に佇むヴァンジ彫刻庭園美術館に足を運ぶと、改めてそんな思いに駆られる。

 クレマチスやバラの咲き誇る広大な庭園の中にある同館では現在、7人のアーティストによるグループ展「センス・オブ・ワンダー もうひとつの庭へ」を開催中だ。

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レイチェル・カーソンの教えに導かれて

 展名の「センス・オブ・ワンダー」という言葉には、出典がある。

 環境破壊に警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者として知られる、海洋生物学者のレイチェル・カーソン。彼女の生涯最後に上梓した本が、この名を冠しているのだ。

 直訳すれば、神秘や不思議さに驚き、畏れを抱く感受性といった意か。自然の営みに触れ、そこから何かを感じ学び取ることが、人の感性を育むには決定的に重要であることを同書は説いている。

 センス・オブ・ワンダーという考えに、最もよく共鳴できる存在はアーティストなのではないか。今展はそんな仮説に基づき、会場に設えたアート作品を通して、センス・オブ・ワンダーを表現しようと試みている。

 テリ・ワイフェンバックは、自然が織り成すシーンの一部分をクローズアップして、写真に留める作品で知られる。小鳥の羽ばたきや草花の揺れる様子がごく身近に感じ取れる写真の美しさには、思わず目を見張ってしまう。

テリ・ワイフェンバック《Centers of Gravity》より  2017年 ©Terri Weifenbach

 テリ・ワイフェンバック作品に呼応するような写真を展示しているのが、川内倫子である。以前にこの美術館界隈で撮影したという作品が並んでおり、いずれの画面にも光が横溢していて眩しい。