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その陰陽のカテゴライズで言うなら、「君がいた夏」、「抱きしめたい」、「Replay」は“陽”になります。歌詞中の恋が成就していれば“陽”というわけではありません。例えば「君がいた夏」は失恋ソングですが、この歌詞の主人公は感傷的になりながらもさわやかで清々しさがありますから、“陽”。
では“陰” の具体的恋愛ソングとは?
“非さわやか”な桜井和寿さんが吐き出すリリックは、穏やかながら、醜い嫉妬心に駆られ、ときに現実逃避し、ときに利己的で、ときに狂おしいのです。
「Over」/至極の“陰”さがなんとも尊い失恋ソング
まず紹介したい“陰” の具体的恋愛ソングは、失恋後の心情を描いた「Over」(1994年発売『Atomic Heart』収録)。
【顔のわりに小さな胸や 少し鼻にかかるその声も】、【嘘のつけない大きな声や 家事に向かない荒れた手のひらも】といった具合に別れたカノジョの愛していた要素を歌い上げます。実在のモデルいるだろ!っていうツッコミ待ちだったんでしょうかね。
とにもかくにも執着しすぎて、【いざとなれば 毎晩君が眠りにつく頃 あいも変わらず電話かけてやる なんて まるでその気はないけど】と、プチ嫌がらせが脳裏をよぎっちゃってるあたり、だいぶ未練たらたら。
はい、“非さわやか”。
ですが、【いつか街で偶然出会っても 今以上に綺麗になってないで】という気持ちはなんとも切ない。この一節に用いられてる言葉は全部ありふれているけれど、これって建前やカッコつけを抜きにして、剥き出しの喪失感や飢餓感と向き合ってないとつむげないフレーズな気がします。尊い。