文春オンライン

菅政権のデジタル戦略、通称「ガースー」が中国方式にそっくりだった件

どこまで個人情報を政府に渡すべきなのか

2020/11/25
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AI、VR、ドローン、ブロックチェーン……中国で活用が進むIT技術

 中国で新型コロナウイルス感染が拡大した今年の年初は、一斉にオンライン授業化が進み、“ネット版ジャパネットたかた”ことライブコマースが普及しました。客のいないデパートから化粧品販売員が実況販売を行い、顧客に対してはオンラインでコンサルして化粧品を販売することが普通になったのです。医療現場では、新型コロナウイルス判定にはAIが、立ち入ると危険な病室での診断やお見舞いにはVRが、病院への迅速な医療機器の配送にはドローンが、病室への配給や病院内の消毒には自走ロボットが活躍しました。最近では、外国から輸入した冷凍食品を通じて感染者が発生したことから、どういう経路で食品が流通したのかが確認できるようブロックチェーンを利用したシステムが登場しています。

 中国では一歩、いや、何歩も進んだデジタル化により新型コロナウイルスに反撃し、感染拡大を防ぎました。ただし、中国の対策の成功の裏側では、相当の個人情報を政府に与えています。

自民党の目指すIT化した日本の未来図とは

 話を日本に戻します。菅政権のもと、デジタル庁の設置、はんこを極力政府内で撤廃すること、携帯電話の通信料金が下がるといったデジタル系の話題をよくテレビで聞くようになりました。DX(デジタルトランスメーション)を進めようとしているわけですが、自民党の目指すIT化した日本の未来図はすでに描かれています。平井デジタル改革担当大臣は、デジタル庁新設に向けた準備室のコンセプトを「Government as a Startup」、略してGaaS(ガースー)と呼んでいます。ガースー、トレンディですね。

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「デジタル庁」は菅義偉首相の肝煎りで立ち上がる ©JMPA

 平井デジタル改革担当大臣のWEBページには、自民党政務調査会デジタル社会推進特別委員会による「デジタル・ニッポン2020~コロナ時代のデジタル田園都市国家構想~」というPDFファイルによる提言書があります。全部で200ページ近いボリュームで、専門用語の多さもあって、事前知識なしに「ちょっと読んでみるか」という軽い気持ちで開こうものならゴリゴリ読む気力がなくなります。簡単に言うと、「東京一極集中はよくなくて、様々な場所に人が住むようになり、東京だけでなく地方でも総オンライン化・デジタル化の恩恵を受けられるようにする」ネット環境をつくることを目的としています。

「デジタル・ニッポン2020」のプロローグ「2030年の日本」より