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菅政権のデジタル戦略、通称「ガースー」が中国方式にそっくりだった件

どこまで個人情報を政府に渡すべきなのか

2020/11/25

本来の用途以外で個人情報を使うことの是非

 中国で新型コロナウイルス拡散が防止できたのは、個人情報を政府に預けたからです。中国では役所の手続きのほとんどがスマホアプリでできてしまうのですが、それは個人情報を出しているからであり、日本でいうところのマイナンバーのような個人情報の一元管理がされているからなのです。

「中国」や「マイナンバー」と聞くと脊髄反射で関連話を悪だと決めつける方もおられますが、それぞれのメリットを理解し、冷静になって欲しいところです。中国の先進的なITサービスは便利なものが目立つ一方で、個人情報を活用したものも多くあります。中国は強い政府が民衆の意見は聞かずに新サービスを導入して運用しますが、日本は民主主義国家ですので、個人情報の扱いも含めていい点・悪い点を論議しながら参考にすべき事例は積極的に参考にすべきです。

 日本政府のシステム導入と運用で気になる例として「今市事件(栃木女児殺害事件)」があります。興味のある方は検索して詳しく読んで欲しいのですが、事件の犯人証拠として、検察が車の通過時刻とナンバープレートを撮影して記録する「Nシステム」の情報を使うという、本来の用途から逸脱した裏技・禁じ手を使ったことが裁判で話題になりました。つまりやむを得ないという理由で、本来の用途以外で個人情報が使われるケースもなくはないわけでして。

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©iStock.com

闇雲に真似るのではなく、日本の社会に合わせた変化を

 ネットの各種サービスは包丁と同じで、使えば便利、悪用すれば犯罪、あるいは不信が増す諸刃の剣ですが、便利な道具であるためもはやまったく導入しないというわけにもいきません。世界各国がIT化・DXで各国の社会環境をよくしようとする中で、中国を参考にしつつも中国を真似しすぎることなく、日本の社会に合わせた変革をしてほしい。

 私は20年近く中国のITに関する記事を書き、ときどき講演を行いますが、講演先のメーカーでよく言われるのが「我々はモノづくりのプロだ。事例を話してくれれば我々が解釈しモノづくりに役立てる」といわれたものです。プレゼンテーションからはガースー内部に中国のアイディアの話は多数来ているようなので、闇雲に真似たシステムを導入することなく、うまく中国などの先例を学び、黒さが光らないガースーになってほしいと思うところです。

菅政権のデジタル戦略、通称「ガースー」が中国方式にそっくりだった件

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