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ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由

ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由

ニセ日本ブランドを名乗るための「架空の創業ストーリー」も

2020/12/21
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 中国は経済成長が続いているのに、相変わらずうさんくさいニセ日本ブランドは健在です。

 先日「壹加生活」なるニセ日本ブランドが話題になりました。そのブランドは、建前上は日本の匠による小ぶりな「雪平鍋の直輸入」を謳いながら、実際は大きな中華鍋を売っていました。消費者よ早く気づけ、と思うんですが、外国人の立場ではなかなか気づかないもので……。

全部デタラメのサクセスストーリー

 壹加生活は説得力を出すべく、日本ブランドを名乗るだけにとどまらず、中国の消費者を納得させる企業ストーリーを用意していました。

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自称鍋の匠「伊藤慧太」氏

――壹加生活は1892年(明治25年)北海道標津町に創業。標津町は世界の厨具生産地として有名で、日本高級厨具のシェア80%を得ている。壹加生活創始者の伊藤穗高氏の鉄鍋は、パリの世界博覧会で好評を受け、さらに伝承者の伊藤慧太氏の作る鍋も日本で好評で、「日本手工芸匠人」の称号を得た。2016年には伊藤慧太氏が1000年の歴史を伝承し、匠の技術で古代の製法による鉄鍋の再現に成功した。「壹加生活」は、鍋の産地である北海道標津町にある「藤井伊株式会社(社長:藤井伊)」のブランドとなり中国に展開した。ドイツのグッドデザイン賞「red dot design award」の最高賞を受賞したほか、1964年にはカリフォルニア州博覧会で金賞、1970年に日本の大阪万博で金賞など数々の賞を受賞。

 全部デタラメのサクセスストーリーです。お腹いっぱいです。当然ながら藤井伊という企業もなければ、オホーツク海沿岸の標津町は鍋の生産地でもありません。1892年というと、『ゴールデンカムイ』の時代のさらに前です。北海道のオホーツク海沿岸でどうしていきなり厨具を作り出すのか、ちょっとは下調べして欲しいところです。外国人によるニセ日本企業のサクセスストーリーは、小説『ニンジャスレイヤー』を見ているようでなかなか読ませるものがあります。