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ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由

ニセの「鍋の匠」まで登場…2020年の中国で「怪しい日本語の製品」が作られる理由

ニセ日本ブランドを名乗るための「架空の創業ストーリー」も

2020/12/21
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本家のダイソー以上に世界中で展開「メイソウ(名創優品)」

 しかも話に信ぴょう性をもたせるために、中国人の役者が演じるニセの日本人の匠「伊藤慧太氏」を用意しました。しかも日本語が非ネイティブなのにカタコトの日本語でしゃべるものだから、いよいよ怪しいのですが、それでも外国ブランドだと信じちゃうんですよね。成功した日本の企業が中国に進出して販売という広告記事を掲載しては、さまざまな中国ニュースサイトが転載し、ついには大本営CCTV(中国中央電視台)のサイト「央視網」まで掲載してしまう始末。壹加生活はバレる12月中旬まで販売し続けていましたが、偽ブランドだとネットで話題になると公式サイトも消し、早々に風呂敷を畳みました。

 振り返れば今年ニューヨーク証券取引所に上場した「メイソウ(名創優品)」も初めはそうでした。ダイソーのようなユニクロのような無印良品のような雑貨チェーンの企業でしたが、住所は「渋谷区神社前」となっていたり、商品名や解説の日本語がおかしいなど、中国マニアの日本人を中心にさまざまな誤植が紹介され、笑いを提供しました。そうはいっても中国企業なので、頻繁に企業や商品や店舗のアップデートを行ったおかげで、メイソウの店舗からは“B級要素”は消えていき、本家のダイソー以上に世界中で展開し人気を博していきます。

メイソウは世界中で人気 ©山谷剛史

 他方、近年中国では「国潮」=「メイドインチャイナすごい」ブームがおき、中国ベンチャー企業による中国の伝統的なデザインの製品が、20代の若者を中心に受け入れられています。中国の若者からすると、中国産はダサいという感覚がなくなっているんですね。代表するブランドといえば、例えば化粧品の「完美日記」でしょうか。日本の若い女性の中にいるチャイナコスメ好きの中では一目置かれる存在です。

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日本人が想像もつかないような独特な日本語

 そうした国潮ブームの中にも、日本らしさが取り入れられています。国潮を代表する新興飲料ブランド「元気森林」は、中国企業でありながら日本っぽい。というのも当初はボトルに中国語簡体字にはない日本語漢字の「気」の表記を出していたり、「日本国株式会社元气森林監制」と書かれたり、広告に日本語を出したりしていたのです。

日本を意識した中国ブランド「元気森林」

 元気森林は有名なスタートアップ企業ですが、小さな企業や個人を見渡せば、中国ベースのデザインに日本語を書いたTシャツやパンツをはじめとしたアパレル製品や、スマートフォンケースや、マスキングテープなど、数えきれないほど売られています。日本人が想像もつかないような独特な日本語、つまりは天然モノの変な日本語の言い回しが書かれた商品は以前よりも本当に増えました。