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「文春に情報を出した」DHC新入社員が“濡れ衣”で懲戒解雇 弁護士は「不当解雇にあたる可能性が高い」

「会長の差別発言について意見しましたが…」DHC元新入社員が告発#2

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Aさんにかけられた事実無根の嫌疑

「実は12月28日昼に懲戒解雇の知らせを受けたとき、Xさんから『会長が「文春に情報を出したのはAさんだね」って仰っていましたがご存じですか?』と聞かれたんです。その時はわけがわからなかったのですが、夜にネットを見て『ああこのことか』とやっと合点がいきました」

 Aさんが見たのは、12月28日20時に公開された「文春オンライン」のDHC内部告発記事だ。取材班は12月25日にDHCへ事実確認をするための質問状を送付しているため、DHC側は社内事情に詳しい関係者が吉田会長の差別発言や“サクラ投稿”について告発していることは知っていた。吉田会長らは、かねてよりDHCに対して批判的な意見を言っていたAさんが内部告発者であると考えたのだろう。

 しかし、取材班がはじめてAさんと連絡をとったのは記事公開後、年が明けてからだ。Aさんにかけられた嫌疑はまったくの事実無根なのである。

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「28日は『文春オンライン』の記事が公開された日で、しかもボーナス支給日だったんです。人事からは事前に『28日付で辞めたとしても賞与支給対象』だと伝えられていたのですが、懲戒解雇だったためか、その後に賞与が振り込まれることはありませんでした」

 懲戒解雇という処分にどうしても納得のいかなかったAさんが弁護士に相談したところ、「まずは質問状を送ってはどうか?」とアドバイスを受けたという。

「懲戒解雇に至った事由に思い当たるところがなかったので具体的な理由を聞きたいこと、就業規則を閲覧させてほしいこと、失業手当給付のために離職票を発行してほしいことを明記して、弁護士の助言をもらいながら1月7日に質問状を送付しました。今後の転職活動にも影響するので、少しでも納得のいく回答が得られればと思って……」

 DHCからは吉田氏の名前が入った回答が約1週間後に届いた。解雇の事由は懲戒解雇通知書に書かれていたものと同様だったが、該当する就業規則の条文が明記されていた。

《従業員就業規則第46条第2項第2号(本規則にしばしば違反するとき)、第3号(素行不良にしてしばしば会社内の風紀秩序を乱したとき)、第4号(故意に業務の能率を阻害し、又は業務の遂行を妨げたとき)、第7号(業務に不熱心なとき)》

 Aさんは回答書を読み、更に混乱したという。

「僕のどんな行動が懲戒処分に該当したのかを聞きたかったのですが、それは叶いませんでした。懲戒解雇にあたる“しばしば”とは、一体どの程度なのでしょうか……。回答書を読んで、もっと混乱してしまいました」

Aさんの質問状に対するDHCの回答書

 東京労働局の担当者に話を聞いた。

「労働契約法第16条に『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』と記されており、この点に照らし合わせて不当解雇かどうか判断します。