昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/04/01

 病院の付き添いや手術の同意の問題など、個別の業界に対しても具体的にお願いをして回らないとと思っています。例えば、この前不動産業者の方に宅建の話を聞いたんですが「うちではそういう(性的マイノリティ当事者の)現場に立ち会ったことはなくて、問題は起きていないですよ」と言われてしまって。

 以前の私と同じような認識ですよね。きっと当事者の方は「ここではカミングアウトなんてできない」と思っていたんだろうなと想像します。

 ですから、今回の制度を作ったのはスタートのスタートで、ここからひたひたと広げていく必要があります。これからの方がはるかに道は険しいなと思いますね。

――他の自治体では条例によって性的指向や性自認に関する差別禁止、アウティング(*)の禁止などを定めているところもありますが、そういったことは考えられていますか。

近藤 正直まだそこまでは行けていないと思っています。まずは要綱をもとに理解の輪を広げていきたいなと。マニュアルの中にアウティング禁止や学校現場でカミングアウトを受けた際の先生の対応など、細かい点は書き込んでいきたいと思っています。差別については性的マイノリティに限らずさまざまなものがあるので、これ一本で(条例をつくる)、ということはちょっと考えていないです。

*アウティング……本人の性のあり方を、同意なく第三者に暴露してしまうこと

 長期的には小さい頃からの教育が非常に重要だと思うんですよね。周りの大人が気づかないうちに「男らしく」「女らしく」というのを刷り込んでしまう。これからはどっちでもありなんだということをどう教えていくか。

 

 でも希望がないわけじゃないと思っています。最近の子どもたちのランドセルの色を見ると、女の子はブルーや紺のランドセルを背負っていて、一番の売れ筋が茶色なんです。ただ、まだ男の子が赤やピンクのランドセルを持っているのは見たことがない。

 まだまだこれからだとは思いますけど、昔みたいに赤と黒しかないという時代ではなくなってきているなと思うと、まさに過渡期だなと感じますね。

この時代の一つの「ガラスの天井」を壊す

――近藤区長は東京23区で唯一の女性区長ですが、今後の多様な性のあり方の視点も含めたジェンダー平等について、どうお考えですか。

近藤 最近は「クオータ制度」など議論がされていますが、これはどこか“逆差別”なんじゃないかという思いがあったんです。でも、それは私がたまたま区長という立場まで来れたからこそ言えることであって、今の現状を考えると、女性の議員が3割というのは、そう簡単には実現できないんですよね。壁はまだまだ厚いです。

 性的マイノリティの方にどれだけ影響があるかということは分かりませんが、女性の議員が増えて、この時代の一つの「ガラスの天井」を壊すことができたら、もしかしたら性的マイノリティや、他にも例えば障害のある方など、さまざまな状況の人の一つの希望になれるのかもしれません。

 自分の世代でできることはやって、バトンタッチしていかなければいけないと思っています。時間は限られていますから、限界はあるかもしれませんが、出来る限り背伸びをして、手を伸ばして、精一杯責任をまっとうしていきたいと思っています。

写真=平松市聖/文藝春秋

この記事の写真(5枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー