今日から東京都足立区で、性的マイノリティのカップルを自治体が認証する「パートナーシップ制度」がスタートした。

 昨年9月、足立区議会で自民党・白石正輝議員が「日本人が全部L(レズビアン)、G(ゲイ)になってしまったら、足立区は滅んでしまう」という趣旨の発言をし、多くの批判を集めたことを覚えている人は多いだろう。

 筆者もこの発言について批判し、81歳の祖母が白石議員へ宛てた手紙もここで紹介した。

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 一方、差別発言からたった2ヶ月で、足立区の近藤やよい区長は「パートナーシップ制度」の導入を発表。さらに今年1月には、カップルの子どもも含む家族関係を認証する「ファミリーシップ制度」も盛り込むことを発表した。

 このスピード感には驚きと歓迎の声が広がった。白石議員の発言は「一線を超えてしまった」という近藤区長。なぜ制度導入へと繋げることができたのか話を聞いた。

近藤やよい区長

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私も差別された方の一員だ

――まず率直に、白石区議の差別発言についてどう思いましたか。

近藤やよい区長(以下、近藤)あの発言は一線を越えてしまったと思っています。単なる一区議の発言の域を超えて、足立区役所、ひいては足立区民まで(白石区議と)同じ考えなのではないかと問われかねないような状況で非常に危機感を持ちました。

 ただ、最初はLGBTに関する発言よりも、「普通に結婚して、普通に子どもを産んで、普通に子どもを育てる、僕はそういう人生を歩んできました」という女性蔑視の方を私は強く感じていました。私は結婚もしてないし子どもも産んでいないので「あ、私はこの方の言うところの『普通じゃない』人間なんだな」と。

――「普通/普通じゃない」という線引きから、性的マイノリティに関する差別についても共感をされたのでしょうか。

近藤 すごくシンパシーを感じましたね。「私も差別された方の一員だ」と思いました。

 ただ一方で、他の自治体でポツポツと性的マイノリティに対する施策が進んでいることを耳にしつつも、それまでは区内の当事者の方から要望をいただいたことがほとんどなかったので、「まだ足立区では(性的マイノリティについての施策を進める)機が熟していないのかな」と勝手に解釈していました。

 この点については忸怩たる思いがあります。機が熟すのを待つのではなく、住みづらさを感じている方が一定数いることや「相談することにもハードルがある」という現実をもっと自分ごととして考え、早くから向き合うべきだったということを反省しています。