約10メートルの距離から硬式球を投げつけられ
同じ6月には、Aさんの後頭部に硬球があたり、脳震盪を起こした。ダブルプレーの練習中だった。学校は「偶然の事故」であり、いじめではないと判断した。この頃、Aさんが元気がなかったために、顧問が声をかけた。「嫌なあだ名で呼ばれたり、部内の役割を押し付けられている」との訴えがあった。そのため、このときは部員を注意した。
7月24日、キャッチボール中に加害生徒が他の部員から揶揄された。Aさんは咳払いをしただけだが、Aさんも笑ったと感じた。そのため、加害生徒が、約10メートルの距離からAさんに硬球を投げつけた。左前腕部と左足付け根付近を痛打。左骨盤部挫傷のけがを負った。
調査会の報告書では「関係生徒からの供述にはばらつきがあったものの、痛がった、うずくまったとの供述は複数あり、うずくまり苦痛を表明したことは認定した」と記されている。
学校は具体的な対応をせず「息子だけが排除された形になりました」
8月24日、2年生部員6人が集まったときに、Aさんを LINEのグループから外した。聞き取りによると、「(部活に)出て来なくなったので、自分たちで外そうと決めた」「そのときのノリで抜いた感じだと思う」との証言があった。30日、顧問は全部員を集め、事実を確認した上、「Aさんに対して気にかかることがあれば相談するように」と指導した。
同報告書では「LINEグループからその意に反して外される行為については、これは外された生徒において苦痛を感じることは、特段の事情がない限りは、客観的に明白」とした。そのほか、Aさんの携帯電話のインターネットの閲覧履歴を見られてからかわれていたことも認定されている。
これらの結果、Aさんは部への復帰を断念。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受ける。8月末からAさんは高校へ通学することができず、11月、不登校による留年などの可能性を示唆された。最終的に、12月31日、同校から通信制高校へ転学して、加害者と県に代理人を通じて通告書を送付した。
「学校は具体的な対応をしませんでした。そのため、硬球を投げつけられた件については、学校側に『警察に言うよ?』と話すと、『やるならどうぞ』と言うだけ。結局、警察は学校へ立ち入り現場検証までしています。しかし、初犯で非行歴がないことから、家庭裁判所では『悪質だが、不処分』となったのです。本来なら、校長が認識した段階で、高野連に報告していればよかったんです。しかし、何事もなく練習し、息子だけが排除された形になりました」(Aさんの父親)