一連の行為を「継続的差別的」であるとして、いじめと認定
その2ヵ月後の2018年2月末、同校は県教委に対して、いじめ防止対策推進法による「重大事態」の発生を報告した。同年3月、県教委は神奈川県いじめ防止対策調査会調査専門部会を設置した。関係者からの聞き取りのほか、7回の会議をして、2019年3月、調査報告書を公表した。
報告書によると、Aが硬球をぶつけられたのは「故意」と認定。このことで精神的ショックも強く、PTSDの診断などを確認した。そのため、少なくとも、硬球の投げつけ、LINEグループ外しなどの一連の行為は、「単発的偶発的なもの」ではなく「継続的差別的」であるとして、いじめと認定した。
不登校・転学の原因については、いじめである可能性を否定できない、とした。
また、いじめの原因が「継続的差別的」であるとした上で、「単に問題となった行為を禁止するだけでなく、何故にかかる行為がなされたのか理由を問い、その上で如何なる理由も相手に敢えて苦痛を加えることを正当化しないことを明確にした上で、その理由となった事情についてどのように解決するか考察させること」とした。
保護者への対応についても、保護者の意図を理解せず、信頼を得られなかったことを指摘する。
2018年3月、損害賠償訴訟を提起
後日、父親が「重大事態報告書」を情報開示請求すると、けがやPTSDの診断については記載項目がありながら、校長は一切記載していなかった。
「校長や教育委員会は、いじめ防止対策推進法による重大事態の基準を私から告げられても無視し続けたが、代理人から訴状を受け取って隠蔽できないと感じたのだと思った。思えば在学中の事実認識も多くがこちらと異なっていたが、学校は調査や確認をしたりその差を埋める事はせず、学校に都合よくまとめていました。
調査委員会が機能しないことが報じられることがあるが、そこから考えれば評価できる内容でした。『継続的差別的』ないじめとした部分は特に評価できます。ただ、調査以前に、学校側が、息子が登校できるように改善をしてくれるという希望を持っていました。しかし、学校に話をしても、きちんとした対応を取りませんでした」(Aさんの父親)
こうしたことを受けて、2018年3月、損害賠償訴訟を提起した。弁護士探しは手探り状態だったという。
「ネットで検索して、学校を相手に訴訟ができそうな法律事務所をあたりました。でも、弁護士にどう話せばいいか最初はわかりませんでした」(同前)
結局、2020年10月、加害者と和解した。和解条項の中には「謝罪」の言葉が入った。また、学校設置者の神奈川県とは2020年12月に和解。「原告が不登校になり、転学に至ったことについて遺憾の意を表明する」ほか、いじめ防止に向けて、引き続き取り組む、とした。