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原発事業における本音と建前

「和歌山では昔から、関西電力が運転する御坊の火力発電所がありました。御坊は二階さんの出身地です。火力発電所は今も運転中ですけれど、施設の脇にあいたスペースがあり、関電はそこを原発のプルサーマル計画に使おうとしていました。使用済み核燃料の保管庫を建設しようとしたのです。なにしろ原発となれば、一大事業ですから、ゼネコンはどこも工事をとりたい。従来の火力発電所は飛島建設が押さえていましたが、原発事業は新たな計画です。だから、工事に入り込みやすいのです」

 使用済み核燃料を扱うとなれば、たいてい地元の反対運動が起きる。そこをどうかいくぐって計画を推進することができるか、それが電力会社とゼネコンとの共同作業になる。ゼネコンが原発事業に参加するためには、地元対策にうまく立ち回る必要がある。まず、電力会社や経産省が大学教授などの専門家を招いて、プルサーマルがいかに安全な計画か、というアピールをする。それにもゼネコンが協力しなければならない。そしてときに反対運動の裏にまで、地元政治家や中央の政官界の意向が反映される。

二階俊博氏 ©文藝春秋

「地元の御坊市や近隣の田辺市、まわりの町は案の定、原発に反対していました。地方はどこも税収がなく、財政がアップアップしていますから、本音をいえば、首長は原発に来てほしい。でも、それをいえば住民から総スカンを食らう恐れがある。それで、地元の政治家は選挙の動向などを見ながら、反対の旗をあげたり、おろしたりするわけです」

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 ある和歌山の建設業者は、原発事業において本音と建前が複雑にからみ合う関係者の意図を次のように解きほぐす。

「原子力事業は、計画段階から地元の合意を取り付ける作業が始まります。一カ所完成させようと思えば、30年かかるといわれる厄介な事業です。その長く大変な計画を進める上で、多くの関係者を説き伏せていかなければならない。そこで関電の立地部や経産省が、誰を頼るか。最後に和歌山ですがる相手は、二階先生しかいません。御坊市や田辺市は二階先生のお膝元であり、原発に反対している県議や市議は二階派が押さえている。地元の説得役にはもってこいでしょう。関電が先生に頼ることを知っているからこそ、ゼネコンも先んじて二階詣でをする。そういう構図なのです」