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 ただ、近年の声優人気によって、声優にはアーティストとしてデビューし、ドラマにも演者として起用され、マルチに活躍することも求められるようになっています。声優がアニメ以外で活躍するのに、「でもアニメは何が何でも声優に」と言うのは、ダブル・スタンダード(二重基準)のように思えるのです。

演技を見る前からダメ出しをするのはフェアなのか

 コンテンツ制作側が「アニメに俳優を起用する」「ドラマに声優を起用する」というのも、批判を承知しての決断です。そこに人気を織り込んでの起用もあるでしょうが、コンテンツ制作はビジネスでもあります。「内容が良いからみんなが見てくれる」という“甘えの発想”はありません。そして公開されたコンテンツに対して、ファンが批判するのは自由ですが、演技を見る前からダメ出しをするのはフェアとはいえない気がします。

 現代は、いわば表現者としての総合力が求められています。多くのクリエーターたちから「あなたともう一度仕事がしたい」と思ってもらえるか、「この人でないとダメ」というものがあるのか。映画やテレビ、アニメやドラマの映像コンテンツは、俳優も声優も関係なく、もうフラットに戦う時代が来たのです。そのことは視聴者側の人ほど、かえって実感していることではないでしょうか。

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 表現者としての総合力が求められる以上、作品の目指す方向性によっては、今回のように主演声優にアーティストを起用するなど、配役のバランスを考えることもあるでしょう。

 コンテンツの「イス取り合戦」は厳しく、俳優もタレントも声優も「表現者」であり、有能な人ほど「良いイス」を取り続けるわけです。「竜とそばかすの姫」に“本職”の声優が少ないことも、そうした“役者”として求められることがあり、競争が激しくなっていることの裏返しになっているのです。