細田守監督のアニメ映画「竜とそばかすの姫」が公開され、公開から3日間で約9億円の興行収入を記録しました。同作のポイントの一つは、主演声優にアーティストの中村佳穂さんを起用し、佐藤健さんや役所広司さん、染谷将太さんらの俳優陣をメインに起用したこと、いわば専門の声優がキャストの中心にいないことでした。本稿では本職の声優が少なかった背景を考えてみます。
「竜とそばかすの姫」とは
同作の舞台は、自然豊かな高知の田舎と、50億人以上が利用するインターネットの仮想世界「U(ユー)」の二つを軸に展開されます。母を事故で失い、大好きな歌を歌えなくなった17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)は、Uにキャラクター「ベル」として参加。Uでは歌えるベル(すず)は人気者になり、コンサートを開催します。
ところが、謎の存在「竜」が乱入。ベルは竜が抱える傷の秘密を知りたいと考え、竜もベルに少しずつ心を開いていくのですが、竜の正体探しが始まり、Uと現実世界の両方で誹謗(ひぼう)中傷があふれる……という内容です。
公開後に、さまざまな考察記事が出ていますが、圧倒的な仮想世界の壮大かつ緻密(ちみつ)な描写に注目が集まっているようです。内容について厳しい意見もあるようですが、作品は批評されるもので、批判はつきもの。批判自体が健全の証(あかし)ともいえます。
個人的には、終盤の展開に意見こそあれ、インターネットでの誹謗中傷問題を取り上げ、炎上や身バレ(ネットで隠していた正体がばれること)の恐ろしさも巧みに表現されており、鑑賞する側が恥ずかしく(かつ応援したく)なるボーイ・ミーツ・ガールのシーンが印象的でした。エンターテイメント作品としては、再度鑑賞したい一作です。
キャスト発表時にあった本職声優が出ないことへの“拒否反応”
その中で公開前から気になっていたことがあります。中村さんの主演声優起用の発表時からみかけた、メインで本職の声優を起用しないことへの“拒否反応”です。