あ、マレーヴィチですね
――上坂さんの活動には、ロシア・アバンギャルドの匂いが随所に感じられます。これはもう、お好きだから反映しているということなのですか?
上坂 そうですね。当初はアクセント的に使いたいと思っていたんですが、ちょっと要素を使うだけでもかなり強い。デビューシングル『七つの海よりキミの海』のジャケットとかは、ロシア感満載でしたけど、これは主張の激しい文化だなって、あらためて思いました(笑)。
――ソ連時代の絵画は、どんな作品がお好きですか? 参考までに図録をお持ちしました。
上坂 あ、マレーヴィチですね。しかも、舞台装置と衣装をデザインしたオペラ『太陽の征服』。復元上演が昔、日本であったんですね。舞台ってなかなか資料でもカラーで見られないから珍しい……。
――演劇作品資料は確かに貴重かもしれないですね。
上坂 これは有名な『赤き楔で白を撃て』(エル・リシツキー)。私も初めて見たとき感動しました。このデザイン性の強い図形だけで赤軍が白軍をやっつけてることを表現してるって、なかなか大胆な勇気が必要だったと思います。
古い物のほうが、落ち着くところがあるかもしれませんね
上坂 (ページをめくりながら)……ロシア・アバンギャルドの工芸品は、今もリバイバルして売っていますけど、デザイン性が高くてかわいいものもたくさんあります。この、ソ連国旗の鎌と槌をデザインした布地の柄、かわいいワンピースにして欲しいです。
――ソ連時代の映画もご覧になるんですか?
上坂 好きですし、サイレント映画のポスター展にも行ったことがあります。あ、それはエイゼンシュテインの『十月』のポスターですね。あえて写真を使わずに、人物を描き込むあたりが好きです。あと、光を黄色で描くところも。こういうレタリングや構成の仕方が、なかなか思いつかないんですよね。
――古めのものに関心がいく趣味傾向を、ご自分ではどういうふうに捉えていますか?
上坂 そうですね……。流行に乗れないタイプなので、周りから「これ知らないの?」と言われて追いかけるより、自分で好きなときに、好きな時代のものを読んだり、聞いたり、見たりしたい。古い物のほうが、落ち着くところがあるかもしれませんね。
◆「ソ連大好きインタビュー」はまだまだ続きます!
#2 ソ連崩壊の年に生まれて http://bunshun.jp/articles/-/4790
#3 私のフルシチョフ http://bunshun.jp/articles/-/4791
写真=鈴木七絵/文藝春秋
うえさか・すみれ/1991年神奈川県生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。在学中の2012年1月にTVアニメ『パパのいうことを聞きなさい!』で声優として本格的にデビュー。2013年『七つの海よりキミの海』でアーティストデビュー。“共産趣味”の他にも、昭和歌謡、プロレスなど幅広い趣味を持つ。
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