坂の上に向かうと…
少し北側(つまり東横線日吉駅方面)に歩くと、綱島街道という比較的大きな通りにぶつかる。菊名駅周辺では最大の交差点だ。この綱島街道の東側は急峻な崖が切り立っている。
なんとなく、坂を登ってみようと思ってよちよち歩いて進んでいった。綱島街道をぐるりとまわり、蓮勝寺というお寺の脇の“川崎坂”という急坂を登る。5分ほど登るとどうやらてっぺんにたどり着く。周辺はほとんどびっしりとした住宅街になっている。
地図を見ると、てっぺんのあたりの地下には首都高が通っているようだが、もちろん地上を歩く限りはまったくその様子はうかがえない。てっぺん、つまり“峰”を少し歩くと、西側の崖下に向かって眺望が開けている場所があった。
夕方近く、日が沈む西側はまさしく新横浜方面。ひときわ目立つのっぽなビルは、新横浜プリンスホテルだ。天気が良ければ丹沢山地、そして富士山も見えるのかもしれない。
歴史的なことをまた話すと、この高台にはかつて貝塚があったという。貝塚というのはモースとセットで教科書にも出てくる、縄文時代の人たちのゴミ捨て場である。
縄文の昔、菊名の高台の下は海であり、海沿いの高台に暮らしていた縄文人たちがここにゴミを捨てていた。日本犬の骨がたくさん出土したり、土器や石器も発掘されたというが、いまは住宅地になっていてその痕跡はまったく見られない。
橋を渡って西口へ
崖の上からまた急な坂を下って菊名駅の近くに戻る。南北に通る東横線は、跨線橋で跨ぐことができる。東横線の改札の前にある東急ストアは跨線橋の上にも出入り口があるというなかなか変わった構造をしている。駅の東西はこの跨線橋が結んでいるので、いわゆる“西口”にも駅の構内を経由せずに出られる構造だ。
菊名駅の西口は、こちらも狭い道が駅前に直接乗り入れていて、駅前広場のようなものはないという点において東口と共通している。飲食店やらが狭い道に並んでいるのも東口と同じだ。違うのは、ちょっと賑わいにおいて東口に劣っているところ。菊名の町の中心は、東側の崖の下の狭い低地にひしめいているのだ。
西口には「JR菊名駅」というすっかり東急の存在を無視したかのような駅舎があって、すぐ脇に横浜線のホームが見える。ガードをくぐれば菊名駅の南側。菊名駅の南側に行っても出入り口はないのだが、せっかくなのでそちらも少し歩いてみる。