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「ワクチン接種率は変わらないのに…」医療崩壊寸前の韓国 なぜ日本との差がついた?《6割がブレイクスルー感染》

2021/12/25
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 今年5月、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)とイングランド公衆衛生庁(PHE)が英国内のデータを分析して、ファイザー製ワクチンを2回接種したときの発症予防効果は85〜90%、アストラゼネカ製も同じく85〜90%と推計した。感染予防効果は、ファイザー製は70〜90%と推計した一方、アストラゼネカ製はデータ不足で確認できなかったと発表した。

 感染症のワクチンは感染時の発症や発症を伴う感染を抑えるものであり、接種の有無に関わらず、リスクが高い生活を送れば感染する可能性は高くなる。

6割が“ブレイクスルー感染者”

 韓国政府は12月13日、防疫パスを導入した。ワクチンを2回以上接種した人などに発行し、未接種者や1回しか接種を受けていない人と区別する制度だ。ソウル市では12月第2週(5日~11日)に感染が確認された1万1200人あまりのうち、3分の2に相当する64.9%がワクチン接種を完了したブレイクスルー感染者だった。また同期間に死亡した感染者147人中40.8%に相当する60人がワクチン接種完了者だった。

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 mRNAワクチンは接種後、5~6か月で効果が低下するといわれているが、韓国国立保健研究院の分析で、免疫力が弱い高齢者が接種したアストラゼネカ製ワクチンは、接種後3か月で効果が半減していた。接種完了者のおよそ半分に相当する2100万人余りが2回目の接種を終えてから3か月以上経っている。

ソウル中区保健所でコロナ検査を待つ人々(筆者撮影)

 韓国政府は、3回目のブースター接種を呼びかけるが、ブースター接種も感染や発症リスクを軽減するものでしかない。

 与党「共に民主党」から大統領選に出馬する李在明(イ・ジェミョン)候補は「ソーシャルディスタンス規制を強化すべき」だと政府を批判し、韓国メディアは医療現場の状況やワクチン効果の検証など周到な対策を行わないままウィズコロナを宣言した韓国政府を批判している。だが、現在の感染者数を減少させるには、人々の認識や行動もまた、変化を求められているのではないだろうか。

「ワクチン接種率は変わらないのに…」医療崩壊寸前の韓国 なぜ日本との差がついた?《6割がブレイクスルー感染》

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