文春オンライン
「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

2022/03/27
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「日本がすぐに援助の手を差し伸べてくれました。心から感謝しています――」

 3月23日、国会でおこなわれたオンライン演説で、ウクライナのゼレンスキー大統領は、そう日本に向けて言葉を贈った。

 その演説の効果もあってか、日本国内ではいまもウクライナへの支援の輪が広がり続けている。全国各地で義捐金の呼びかけやチャリティコンサートがおこなわれ、多くの自治体や企業が難民の受け入れに手をあげている。政府も難民支援のため、古川禎久法相を岸田首相の特使としてウクライナの隣国・ポーランドに派遣する方針だ。

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 8000km以上離れた日本に避難したウクライナ人は23日時点で188人。ロシアによる侵攻をうけ、ウクライナ人はこれまでに350万人が国外に逃れており、日本を頼ってやってくるウクライナ人も今後増加する可能性がある。しかし、実は、日本政府が掲げる難民受け入れの構造には大きな壁があるのだという。

「文春オンライン」は3月12日に来日したキエフ出身のオクサナさん(40・仮名)一家に話を聞くことができた。

 キエフ在住のオクサナさん一家は、日本に住む姉のサーニャさん(42・仮名)を頼り、娘の大学生エレナさん(20)、中学生のナタリアさん(13)と母親を連れ3月12日に入国した。数度のPCR検査、ホテル隔離の後、現在は都内のサーニャさんの自宅に身をよせている。

日本に退避してきたオクサナさん ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

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安全な国に受け入れてもらえたことにホッとしています

――キエフから日本まで避難した経緯を教えてください。

オクサナ 我が家は侵攻がはじまる前日の2月23日に、なんとか最後の飛行機でキエフを離れることができました。どの飛行機も満席でしたが、エジプト行きの便に少しだけ空席があったので、スーツケース2つを持って、まずはエジプトに飛びました。現地ではホテルを転々としていましたが、毎日ニュースをみて、不安で仕方なかったです。そのままポーランドかドイツに渡ろうとしたときに、姉から「日本が受けいれてくれる」と聞き、飛行機に乗って12日に到着しました。

――日本に来て感じたことはどんなことでしょうか。

オクサナ 実はこれまでにも3~4回日本に来ているんです。だから初めてきたときに比べると感動は少ないのですが、安全な国に受け入れてもらえたことにホッとしています。

エレナ ご飯がおいしいのがありがたいです。私はカレーが好きなので。ウクライナにはインド風のスープカレーはあるのですが、日本のカレーはそれとは違って本当においしいですね。

ナタリヤ 私は焼きそばが好きです。あのソースはむこうには売ってない。本音を言えば、いつか日本に来たら「富士山に登りたい」とか思っていたのですが、今回は国があんなことになっている中ですから、とても観光する気になれない。それはエジプトでも同様でした。