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「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

2022/03/27
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子どもたちは大人を心配させないように行動している

エレナ「60歳以上の人は国外に退避してもいい」と言われているんですけど、それでも出ないんですよ。「国のためにウクライナに残りたい、何かの役に立ちたい」って。もちろん逃げたい人もいるけれど、基本的には60代の高齢者たちでもウクライナに残っています。

©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 そういう人たちは、いまはボランティアで活動しています。軍には例えば警察官とか専門学校を卒業したとか、そういうキャリアのある人たちが行っています。多くの女性や高齢者はシェルターにいる人たちにお水とか、石鹸とか食事を運んだりしています。

ナタリヤ 子どもたちは、基本的には勉強しています。あとは大人の邪魔をしないよう、1人で外に出るとか、危ないことをしないように待っている。大人を心配させないように行動している感じです。

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男性たちがウクライナから出てしまったら戦う人がいなくなってしまう

――お父さんやお友達は戦闘に参加することもあるのですか?

ナタリヤ お父さんはキエフに残って自警団をつくり、夜の見回りをしています。軍を抜け出したロシア兵が、途方にくれて空き巣をしていると噂になっているようです。皆の家を守るためにやってくれています。

©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

エレナ ボーイフレンドも戦っています。夜、電話で話をしますが、何処にいるかとか詳しいことは軍の決まりで教えてもらえません。写真もだめです。それでもいまは、元気な声を聞かせてくれるだけでいいと思っています。

オクサナ 夫には本当は安全なところに避難してほしいけど、今、頑張ってくれていることを誇りに思っています。男性たちがウクライナから出てしまったら戦う人がいなくなってしまう。生きることは大事だけれど、国内に残っている子どもたちや、避難できなかった人たちも守らなければならない。彼らを見捨てることはできません。両親が歩けないとかいろんな事情を抱えた人がいるので、その人たちも守らないといけない。